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Week 13 — 人月ビジネス
2026.10.28  ·  水曜 / システナ(2317) 深掘り

システナ——人を増やさずに売上を伸ばした、典型的な人月の会社

保有中(含み損益 -7.84%/2026年10月28日時点)

火曜のSHIFTは、人を増やし、それ以上に売上を伸ばしていた。日本では人を集められること自体が強みになる、という話だった。

今日は、もっと典型的な人月の会社を見る。日本からはシステナ、インドからはインフォシスだ。どちらもエンジニアを抱え、客の仕事を請け負って、働いた時間や月数で代金を受け取る。月曜の式「人数×単価×稼働率」が、いちばん素直に当てはまる2社だ。

結論を先に書くと、この2社は式の「人数」の項で正反対の動きをしていた。

2社はどんな会社か

システナ(保有中)インフォシス
本社東京インド・ベンガルール
主な事業車載ソフト、システム開発、IT機器の運用・保守、法人向けクラウドサービス欧米の大企業向けのシステム開発・運用、コンサル
社員数単体3,856人(2026年3月期末)332,542人(2026年9月末)
直近の売上944億円(2026年3月期)51.5億ドル(2026年7〜9月期)

インフォシスは、インドのITサービスで2番目に大きい会社だ。33万人のエンジニアを抱え、欧米の客の仕事を、人件費の安いインドで請け負う。人月ビジネスを世界でいちばん大きな規模でやっている会社の一つと言っていい。

システナは、ずっと小さい。ただ、車のソフトウェアやスマートフォン向けの開発・テストなど、エンジニアを客の仕事に就けて代金を受け取る形が中心という点で、インフォシスと同じ形をしている。

物差し①:売上は人数に比例しているか

インフォシス:人数も売上も、ほぼ止まっている

項目2025年9月末2026年9月末伸び
社員数約331,990人332,542人+0.2%
7〜9月期の売上(ドル)50.8億ドル51.5億ドル+1.3%

※2025年9月末の社員数は、2025年12月末の337,034人から10〜12月期の純増5,043人を引いた値。

人数は0.2%、売上は1.3%。式どおり、人が増えないので売上も増えない。

10月に発表した7〜9月期の決算で、インフォシスは今期の売上の伸びの見通しを1〜2%に下げた。7月には1.5〜3%としていたので、2四半期続けての引き下げだ。月曜に書いた「AIでの効率化の分け前を客が求める」動きが、ここでも数字になっている。

それでもインフォシスは、今期に約2万人の新卒を採る計画を続けている。上半期だけで1万2,000人を超える新卒を採った。若いエンジニアを大量に採り、育てて客の仕事に就ける。この「ピラミッド」の形が、インドのITサービスの強さだった。AIが若手のする仕事から先に置き換えていくなら、このピラミッドの土台がいちばん先に揺らぐ。

システナ:本体の社員を減らしながら、売上を伸ばした

項目2024年3月期2025年3月期2026年3月期
社員数(単体)4,042人3,955人3,856人
売上(連結)769億円836億円944億円
営業利益(連結)97億円121億円154億円

※社員数は単体(システナ本体)の値で、子会社の社員は含まない。売上と営業利益は連結。

2年間で、本体の社員は4.6%減った。その間に売上は23%、営業利益は59%増えた。

子会社の社員を含まないので、単純に1人あたりの売上を出すことはできない。それでも、少なくとも本体では、人を増やさずに売上と利益を大きく伸ばしたことは数字から読める。人を増やすほど売上が増える、という式の形からは外れている。

その中身は、単価と、儲かる分野への入れ替えだ。今期の4〜6月期は、車載ソフトを手がける次世代モビリティ部門の売上が17.2%、営業利益が23.5%伸び、この部門の営業利益率は40%を超えた。車のソフトウェア化(SDV)が進み、高い単価で仕事を受けられる分野に、エンジニアを寄せている。

物差し②:1人あたりの利益は上がっているか

項目システナインフォシス
営業利益率16.3%(2026年3月期)21.0%(2026年7〜9月期)
2年前12.6%(2024年3月期)ほぼ横ばい(今期見通しも20〜22%)

システナは、2年で営業利益率を3.7ポイント上げた。社員が減り、利益が増えたので、1人あたりの利益ははっきり上がっている。

インフォシスは、利益率そのものはシステナより高い。インドの人件費の安さが効いている。ただ、利益率は横ばいで、売上が伸びない分、利益も伸びていない。7〜9月期の純利益は8.17億ドルで、前年から2.6%減った。

物差し③:時間で請求しているか、成果で請求しているか

インフォシスは、AIで生まれた売上が全体の10.5%になったと公表した。前の四半期から29%増えている。7〜9月期には、20億ドルを超える大型案件を含めて52億ドルの新規契約も取った。

ただし、AIの売上が増えても、会社全体の売上の伸びは1%台にとどまっている。AIの売上が、AIで減った従来の仕事の穴を埋めている、という形に見える。

システナは、AIの売上の割合を数字では示していない。AIやDXを成長分野に掲げているが、今の増益を支えているのは、車載ソフトの高い単価だ。AIが追い風になっているかどうかは、まだ数字では確かめられない。

評価を並べる

指標システナインフォシス
株価447円約1,115ルピー
時価総額1,903.7億円約4.65兆ルピー(約8兆円)
PER15.0倍(予想)14.9倍(実績)
PBR4.05倍約5.1倍(計算値)
ROE31.4%(実績)約32%(計算値)
理論PBR(ROE÷8%)3.93倍約4.0倍
実際÷理論1.03約1.3
成長倍率(PER÷12.5)1.201.19
配当利回り4.03%(予想)4.5%前後

※システナは2026年10月28日時点。インフォシスはインド市場の直近の値。円換算は1ルピー=1.75円で概算。 ※インフォシスのPBRは、時価総額を1ドル=88ルピーでドルに換算し、9月末の株主資本103.3億ドルで割った計算値。ROEは7〜9月期の純利益8.17億ドルを4倍して年換算し、同じ株主資本で割った概算。 ※インフォシスの配当利回りはデータソースの値。

インフォシス:高値から3分の1下げて、上乗せは小さい

インフォシスの株価は、この1年の高値1,728ルピーから3分の1ほど下げている。安値は980ルピーだった。実際÷理論は約1.3で、火曜のEPAMとほぼ同じ水準だ。

ROE30%を超える稼ぐ力はあるが、売上が伸びない。市場はそれを値段に入れ、成長を期待しない値段をつけている。

システナ:上乗せはほぼない。ただし今期の利益は減る見通し

システナの実際÷理論は1.03で、ほぼ理論どおりの値段だ。火曜のSHIFT(3.07)とは大きく違う。

ただし、気をつける数字がある。今期の会社予想は、売上980億円(前期比3.8%増)、営業利益160億円(3.9%増)、純利益106億円(6.0%減)だ。2年で利益を6割伸ばした勢いは、今期は大きく鈍る見通しになっている。

予想の純利益で計算し直すと、ROEは約23%で、理論PBRは2.8倍前後になる。実際÷理論は約1.4に上がる。それでも、SHIFTの3.07よりはずっと小さい。

保有している立場から見て

システナは保有している。含み損益は-7.84%だ。

自分の買い方から見て、システナは今週の3社でいちばん形が合っている。

  1. 本体の社員を増やさずに、売上と利益を伸ばしてきた
  2. 1人あたりの利益が上がり、ROEは30%を超えた
  3. 実際÷理論は1.03で、上乗せがほとんどない
  4. 配当利回りは4%を超える

人月の会社なのに、人数に頼らずに伸びた。これが、月曜に立てた問い「AIは人数×単価の式を壊すのか」に対する、一つの答えの形だ。式を壊されるのを待つのではなく、自分から人数の項への依存を減らしている。

持ち続ける。

確かめるのは、今期の減速が一時的かどうかだ。利益が横ばいになる見通しの中で、車載ソフトの高い単価が続くか、そして配当を保てるか。システナは高配当株として持っているので、減配になれば、自分のルールでは売る理由になる。近く発表される4〜9月期の決算で、通期予想に対する進み具合を確認する。

インフォシスは保有していない。33万人を抱えて売上が止まり、AIの売上が従来の仕事の穴を埋めている今の形では、ROEが高くても持つ理由は見つからない。

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