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Week 13 — 人月ビジネス
2026.10.26  ·  月曜 / テーマ解説

人月ビジネス——AIは「人数×単価」の式を壊すのか

この2週間、自分の持ち株では、AIに近い銘柄から順に下げた。日本電子材料とフォームファクターは2週間で3割を超えて下げ、データセンター向けで業績を引き上げたサンコールも続いた。

その中で、2週続けて上昇TOP3に入ったのがSHIFTだった。

SHIFTは、ソフトウェアのテストを請け負うITサービスの会社だ。AIの恩恵を受ける側の半導体株が売られた週に、上がった。ところが、少し前までの米国では逆のことが起きていた。2026年の米国とインドでは、ITサービスの株こそが「AIに仕事を奪われる側」として売られていた。

同じAIが、ある時は半導体を押し上げてITサービスを押し下げ、ある時はその逆になる。今週は、ITサービスの会社がAIに対してどちら側にいるのかを確かめる。

人月ビジネスとは

ITサービスの会社の多くは、売上がこう決まる。

売上 = エンジニアの人数 × 単価 × 稼働率

「人月」は、1人のエンジニアが1カ月働く量のことだ。システム開発やテストの仕事を「何人で何カ月かかるか」で見積もり、その人数と期間に単価をかけて代金を受け取る。稼働率は、抱えているエンジニアのうち、実際に客先の仕事に就いている割合だ。

この形の良いところは、分かりやすいことだ。人を増やせば売上が増える。悪いところも同じで、人を増やさないと売上が増えない。

AIは、式のどこを壊すのか

AIでコードを書いたりテストを作ったりできるようになると、同じ仕事に必要な人数や時間が減る。それが式の3つの項にどう効くかを並べるとこうなる。

項AIの影響会社にとって
人数同じ仕事を少ない人数でこなせる時間で請求していれば、売上が減る
単価客が「AIで安くなった分を値下げしてほしい」と求める単価が下がる
稼働率空いたエンジニアに次の仕事を回せるかどうか回せなければ下がる

ここで分かれ目になるのが、どうやって代金を受け取っているかだ。

請求の仕方AIで仕事が速くなると
時間で請求する(人月)かかる時間が減った分、売上が減る
成果や件数で請求する同じ代金のまま費用が減り、利益率が上がる

同じAIでも、時間で売っている会社には逆風になり、成果で売っている会社には追い風になる。

2026年に、米国とインドで起きたこと

この心配は、2026年に米国とインドのITサービス株で、実際の株価として現れた。

時期出来事
2026年初めAIの新しいツールが相次いで出たことをきっかけに、ソフトウェア株が売られ、ITサービス株も出遅れた
6月18日アクセンチュアが通期の売上成長の見通しを3〜4%に引き下げ、株価は1日で18%下落。過去最大の下げ幅。EPAMシステムズは1月の高値から67%下げた水準にあった
10月1日アクセンチュアが今期の売上成長を3〜6%と見込み、株価は1日で約22%上昇。過去最大の上げ幅。それでも年初からは約3分の1下げていた

10月の上昇で不安がいったん和らいだように見えるが、ロイター通信は同じ日に、アクセンチュアの価格が多くの分野で下がっていると伝えている。客が、AIで生まれた効率化の分け前を求めているからだ。式の「単価」が、すでに下がり始めている。

インドのITサービス大手も同じだ。インフォシスは2027年3月期の売上成長の見通しを、7月に1.5〜3%と低く示し、その理由の一つに、客がAIによる生産性の向上を期待していることを挙げた。10月にはこれをさらに1〜2%に下げている。

物差しを当ててみる:アクセンチュア

アクセンチュアの数字で、式がどうなっているかを確かめる。

項目2025年8月期末2026年8月期末
社員数約77.9万人約81.4万人(+4.5%)
売上の伸び(現地通貨ベース)―+5%
営業利益率―15.4%

社員数が4.5%増えて、売上が5%増えた。売上は、まだほぼ人数に比例している。1人あたりの売上は、ほとんど変わっていない。

アクセンチュアは2025年に、AIへの対応で学び直しが難しい社員を中心に1万人以上を削減した。それでも1年で見れば社員数は増え、売上もそれに合わせて伸びた。AIで式が壊れた、とはまだ言えない。ただ単価が下がり始めているなら、同じ人数で同じ売上を保つのが、これから難しくなる。

日本は事情が違う

日本のITサービス業界には、米国やインドとは逆の事情がある。エンジニアが足りない。

経済産業省は2019年の試算で、2030年にIT人材が最大で約79万人不足するとしていた。仕事はあるのに、人がいない。式で言えば、「人数」の項が増やせないことが、成長の天井になっている。

この状況では、AIは「仕事を奪うもの」ではなく、足りない人手を埋めるものとして働く余地がある。人を増やせなくても、AIで1人がこなせる仕事が増えれば、売上は伸びる。

SHIFTの決算には、その兆しが出ている。2026年8月期の調整後営業利益は203億円で、前期比14.8%増えた。第3四半期までは採用費の増加などで減益だったが、稼働率の改善とAIの活用で利益率が上がり、通期では増益に転じた。今期は250億円(23.4%増)を見込んでいる。

ただし、日本でもいずれ客は「AIで安くなった分を値下げしてほしい」と言い出す。人手不足が続くうちは単価を守れても、それがいつまで続くかは分からない。

今週の物差し

核融合の週と同じように、今週も3つの物差しで各社を見る。

  1. 売上は人数に比例しているか:社員数の伸びと売上の伸びを比べる。人数より売上が速く伸びていれば、AIなどで1人あたりの生産性が上がっている
  2. 1人あたりの利益は上がっているか:単価と稼働率、営業利益率の推移を見る
  3. 時間で請求しているか、成果で請求しているか:AIが速くした分が、売上の減少になるのか、利益率の上昇になるのか

今週の予定

曜日日本対になる米国・インド見る点
火SHIFTEPAMシステムズテストと開発。AIで最も直接に仕事が変わる分野
水システナインフォシスエンジニアを抱えて客先の仕事を請け負う、典型的な人月型
木辻・本郷ITコンサルティングペイチェックス中小企業の経理・給与などのバックオフィスを、コンサル・システム・業務代行で支える

各銘柄の指標は、それぞれの個別記事で最新の数字を確認する。

金曜は、ここにアクセンチュア、野村総合研究所、富士通なども加えて、日米印のITサービス株を横並びにする予定だ。

今週の日本の3社は、すべて保有している。核融合の週は、すべて保有していない立場から見た。今週は逆に、自分の持ち株がAIに対してどちら側にいるのかを、当事者として確かめる週になる。

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