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Week 13 — 人月ビジネス
2026.10.30  ·  金曜 / ITサービス9社比較

ITサービス9社比較——海外は「人月」に値段をつけず、日本はまだつけている

今週は、ITサービスの会社を6社見てきた。月曜に立てた問いは、「AIは『人数×単価』の式を壊すのか」だった。物差しは3つだ。

  1. 売上は人数に比例しているか
  2. 1人あたりの利益は上がっているか
  3. 時間で請求しているか、成果や件数で請求しているか

今日はここに、月曜に見たアクセンチュアと、日本の大手2社、野村総合研究所と富士通を加えて、9社を並べる。

新しく加える3社

会社どんな会社か
アクセンチュア世界最大のITサービス・コンサル会社。社員約81万人。2026年8月期の売上は741.8億ドル
野村総合研究所証券会社などが共同で使うシステムを提供する「共同利用型サービス」が強み。2026年3月期は海外子会社の減損で純利益が大きく減ったが、今期は回復を見込む
富士通日本最大級のITサービス会社。サーバーやパソコンなどの機器も持つが、利益の中心はシステムの開発・運用のサービス部門。10月29日の決算の後、30日に株価はストップ安になった

野村総合研究所の「共同利用型サービス」は、1つのシステムを多くの客に使ってもらい、利用に応じて代金を受け取る形だ。木曜のペイチェックスに近く、人月とは違う稼ぎ方をしている。

富士通:人月の部分は好調、崩れたのは機械の部分

富士通の4〜9月期の調整後営業利益は1,139億円で、前年から6.1%減った。市場の予想を下回り、30日の株価は1日で16%下げてストップ安になった。

ただ、中身を分けると、崩れた場所ははっきりしている。

部門4〜9月期の調整後営業利益前年比
サービス(システムの開発・運用)1,337億円+11.8%
ハードウェア(サーバーなど)45億円-64%

システムの開発・運用を請け負うサービス部門、つまり人月に近い部分は、売上が5.9%、利益が11.8%伸びた。日本企業のシステムの作り直しやDXの需要が続いている。

利益を押し下げたのは、サーバーなどの機器の部門だ。AI向けの需要でメモリー半導体の値段が上がり、それを部品として買う側の利益が削られた。パソコンも、Windows 10のサポート終了に伴う買い替えが一巡して利益が減った。

富士通は、人月の仕事ではなく、AIで値上がりした部品の買い手として売られた。今週のテーマから見れば、日本の人月の需要はまだ強いことを示す決算だった。

表1:売上は人数に比例しているか

会社社員数の伸び売上の伸び読み方
システナ-4.6%(単体、2年)+23%(2年)人を減らして売上を伸ばした
SHIFT+13.9%(2025年8月期)+17.4%(同)人を増やし、それ以上に売上を伸ばした
アクセンチュア+4.5%(2026年8月期末)+5%(同、現地通貨ベース)人数にほぼ比例
EPAM+1.5%(2026年6月末)+4.5%(4〜6月期)人数も売上も伸びが小さい
インフォシス+0.2%(2026年9月末)+1.3%(7〜9月期)人数も売上も止まっている

※ペイチェックスは客の数で売上が決まるため、この表には入れない。辻・本郷ITは社員数の推移を確かめられる数字がそろっていない。野村総合研究所と富士通は今回は確かめていない。

米国とインドの3社は、人数と売上がほぼ同じ速さで動いている。人を増やさなければ売上が伸びない、という式の形がそのまま残っている。

日本の2社は違った。SHIFTは人を増やしてそれ以上に伸ばし、システナは人を減らして伸ばした。日本の人手不足が、単価を上げられる状況を作っている。

表2:1人あたりの利益は上がっているか(営業利益率)

会社営業利益率方向
ペイチェックス38.0%上昇(前年35.2%)
インフォシス21.0%横ばい
EPAM16.4%(調整後)上昇(前年15.0%)
システナ16.3%上昇(2年前12.6%)
アクセンチュア15.4%横ばい
辻・本郷IT15.1%今期は14.7%の見通し
SHIFT12.5%(調整後)今期は13.2%の見通し

※富士通と野村総合研究所は事業の構成が違うため、この表には入れない。

利益率が上がっている会社は、2つに分かれる。

1つは、売上が伸びない中でコストを削っている会社だ。EPAMがこれに当たる。もう1つは、単価や件数で、売上と一緒に利益率を上げている会社だ。システナとペイチェックスがこれに当たる。同じ「利益率の上昇」でも、意味はまったく違う。

表3:時間で請求しているか、件数で請求しているか

請求の形当てはまる会社AIで仕事が速くなると
時間・人月が中心インフォシス、EPAM、アクセンチュア、システナ、SHIFT単価を守れなければ売上が減る
人月と継続収入の混合辻・本郷IT、富士通継続収入の部分は利益率が上がる
件数・利用量が中心ペイチェックス、野村総合研究所(共同利用型)費用が下がり、利益率が上がる

時間・人月が中心の5社のうち、海外の3社は単価が下がり始めている。日本の2社は、今のところ単価を上げている。SHIFTの月額のプロジェクト単価は、1年で440万円から452万円に上がった。

表4:評価を並べる

会社保有PERPBRROE理論PBR実際÷理論配当利回り
SHIFT保有21.6倍6.94倍18.1%2.26倍3.070.46%
野村総合研究所27.4倍7.93倍約28%(予想)約3.5倍約2.31.47%
ペイチェックス21.8倍約10.5倍約47%約5.9倍約1.84.33%
富士通約19.9倍約3.10倍約15%(予想)約1.9倍約1.6約1.52%
辻・本郷IT保有13.6倍3.63倍18.3%2.29倍1.59なし
アクセンチュア18.2倍約4.6倍約27%約3.3倍約1.42.77%
EPAM18.6倍約2.0倍約12%約1.5倍1.32なし
インフォシス14.9倍約5.1倍約32%約4.0倍約1.34.5%前後
システナ保有15.0倍4.05倍31.4%3.93倍1.034.03%

※株価指標は2026年10月27日〜30日の各社の個別記事時点の値(米国・インド株は直近の市場の値)。富士通のみ10月30日の値に換算。実際÷理論の大きい順に並べた。 ※理論PBRはROE÷資本コスト8%。 ※PERは日本株が予想、米国・インド株は実績。 ※野村総合研究所は前期の純利益が海外子会社の減損975億円で152億円まで減り、実績のROEは3.5%しかない。表のROEは、今期の会社予想の純利益1,190億円を自己資本(時価総額÷PBRで約4,300億円)で割った概算。 ※富士通は30日のストップ安の値(3,622円)で計算し直した。PER・PBR・配当利回りは、29日時点の値(4,322円、PER23.7倍、PBR3.70倍、配当利回り1.27%)を株価の比率で換算した概算。 ※富士通は前期の純利益に事業再編による一時的な利益が含まれ、実績のROEは23.9%と高く出ている。表のROEは、今期の会社予想の純利益3,100億円を自己資本(約2.0兆円)で割った概算。実績のROEで計算すると、実際÷理論は約1.04。 ※アクセンチュアのPBRは時価総額1,460億ドルを8月末の株主資本315.7億ドルで割った計算値。ROEは2026年8月期の純利益83.7億ドルを同じ株主資本で割った値。 ※システナは今期の会社予想の純利益で計算すると、ROEは約23%、実際÷理論は約1.4になる。 ※EPAM、インフォシス、ペイチェックスの計算方法は、それぞれの個別記事を参照。

海外の人月の会社は、そろって1.3〜1.4に並んだ

表4のいちばん分かりやすい点は、ここだ。

会社請求の形実際÷理論
アクセンチュア時間・人月が中心約1.4
EPAM時間・人月が中心1.32
インフォシス時間・人月が中心約1.3

米国とインドで時間を売っている3社は、規模も国も違うのに、上乗せがほぼ同じ水準に並んでいる。アクセンチュアのROEは約27%、インフォシスは約32%ある。稼ぐ力は高いのに、上乗せは小さい。

市場は、人月の会社の「これからの成長」に、ほとんど値段をつけていない。AIが式を壊すかどうかの答えを待たずに、壊れる側に賭けた値段になっている。

日本の会社には、まだ上乗せが残っている

日本の会社は、海外の3社より上に並ぶ。SHIFTは3.07、野村総合研究所は約2.3、ストップ安の後の富士通でも約1.6だ。

理由は2つある。1つは、表1で見たとおり、日本の会社はまだ売上や単価を伸ばしていることだ。人手不足の日本では、AIはまず足りない人手を埋める側に回る。もう1つは、野村総合研究所の共同利用型サービスのように、人月ではない稼ぎ方を持つ会社が混ざっていることだ。

ただ、これは「日本ではAIが式を壊さない」という意味ではない。日本の客が値下げを求め始めるのが、海外より遅いだけかもしれない。そのとき、日本の会社の上乗せは、海外の1.3〜1.4に向かって縮む可能性がある。

システナだけが、海外と同じ値段にいる

表4でいちばん下にいるのは、自分が持っているシステナだ。

今週の物差しで見れば、システナは人数への依存を最も減らせている会社だった。2年で本体の社員を減らし、売上を2割以上、営業利益を6割伸ばした。それなのに、値段は海外の人月の会社と同じか、それより低い。

市場は、システナの今期の減速(純利益6.0%減の予想)を重く見ている。10月29日に発表した4〜9月期の決算では、7〜9月期の営業利益が前年から8.7%減った。4〜9月期の累計では営業利益0.5%減とほぼ横ばいで、通期の予想と年18円の配当予想は変えていない。それでも株価は下げた。

市場は、システナを「典型的な人月の会社」として、海外の3社と同じ箱に入れている。

今週わかったこと

月曜の問い「AIは『人数×単価』の式を壊すのか」に対して、今週の9社から見えた答えはこうだ。

見えたこと
米国・インド式はまだ壊れていない。だが、単価が下がり始め、市場は壊れる側に賭けた値段をつけている
日本人手不足のおかげで、単価はまだ上がっている。市場もまだ上乗せを残している
件数で稼ぐ会社AIの効果が利益率に乗る。ただし客の側の人数が減るリスクを抱える

自分の持ち株から見ると、こうなる。

銘柄実際÷理論今週の見立て
SHIFT3.07物差しの3つにそろって答えているが、9社でいちばん高い値段。単価が下がり始めたら、上乗せがいちばん大きく剥がれる
辻・本郷IT1.59業務代行の継続収入を伸ばせれば、人月から離れられる。11月の決算で、通期予想を達成できたかを確かめる
システナ1.03人数への依存をいちばん減らせているのに、海外の人月の会社と同じ値段。3社でいちばん安心して持てる

3社とも持ち続ける。ただ、持ち方は同じではない。SHIFTは単価の動きを、辻・本郷ITは11月の決算を、システナは配当を見続ける。

Week12では、核融合の部材メーカーの値段を決めていたのはAIへの近さだった。今週は、ITサービスの会社の値段を決めているのが、AIで単価が下がる側か、まだ上がる側かだった。どちらの週も、株価の上乗せを決めているのはテーマそのものではなく、AIとの距離だった。

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