SHIFT——人を増やして伸びる会社が、単価を上げ始めた
保有中(含み損益 +77.92%/2026年10月27日時点)
月曜に、ITサービスの売上は「人数×単価×稼働率」で決まると書いた。AIはこの式の「人数」と「単価」を同時に揺さぶる。
今日はその式を、日米の2社に当てる。日本からはSHIFT、米国からはEPAMシステムズだ。
2社はどんな会社か
| SHIFT(保有中) | EPAMシステムズ | |
|---|---|---|
| 本社 | 東京 | 米ペンシルベニア州 |
| 始まり | ソフトウェアのテスト(品質保証)の請負 | 東欧のエンジニアを使ったソフトウェア開発の請負 |
| 今の事業 | テストを入口に、開発・コンサル・業務システムまで広げている | デジタル化とAI導入の支援。欧米の大企業が主な客 |
| 社員数 | 約1.2万人(2025年8月期末) | 約6.3万人(2026年6月末) |
| 直近の売上 | 1,616億円(2026年8月期) | 約14億ドル(2026年4〜6月期) |
どちらも、エンジニアが客のために働いた時間や月数をもとに代金を受け取る。月曜の言葉で言えば、典型的な人月ビジネスだ。
ただ、2社が置かれている場所は真逆だ。EPAMは月曜に書いた「米国でAIに仕事を奪われる側」として売られた会社で、SHIFTは「人が足りない日本」で人を集めて伸びてきた会社だ。
物差し①:売上は人数に比例しているか
EPAM:人数も売上も、ほとんど伸びていない
| 項目 | 2025年6月末 | 2026年6月末 | 伸び |
|---|---|---|---|
| 社員数 | 約62,050人 | 約62,850人 | +1.3% |
| うちエンジニアなど | 約55,800人 | 約56,650人 | +1.5% |
| 4〜6月期の売上 | 13.5億ドル | 14.2億ドル | +4.5% |
1年前の4〜6月期、EPAMの売上は前年比18%伸びていた。それが今は4.5%で、買収の分を除き為替の影響もならすと3.4%にとどまる。今期の売上の伸びの見通しも3.2〜4.2%だ。
人数は1.5%しか増えず、売上は4.5%増えた。1人あたりの売上はわずかに上がっているが、人を増やさなければ売上がほとんど伸びないという式の形は、そのまま残っている。
SHIFT:人を増やして、それ以上に売上を伸ばした
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 | 伸び |
|---|---|---|---|
| 社員数(期末) | 10,266人 | 11,688人 | +13.9% |
| 売上 | 1,106億円 | 1,298億円 | +17.4% |
| 1人あたり売上 | 約1,077万円 | 約1,111万円 | +3.1% |
SHIFTは、毎年1割を超えるペースで人を増やしてきた。そして売上は、それより速く伸びている。
2026年8月期の売上は1,616億円で、前期比24.5%増えた。このうち、ニッセイコムなどの買収で加わった分を除いても、売上は231億円、約18%増えている。
SHIFTの成長は、まだ「人数」の項で説明できる部分が大きい。人を採り、会社を買い、その上で1人あたりの売上も少しずつ上がっている。日本ではエンジニアが足りないので、人を集められること自体が強みになっている。
物差し②:1人あたりの利益は上がっているか
| 項目 | SHIFT | EPAM |
|---|---|---|
| 単価 | 月額のプロジェクト単価452万円(前期440万円、+2.7%) | 公表なし |
| 営業利益率 | 12.5%(調整後、2026年8月期) | 16.4%(調整後、2026年4〜6月期。前年15.0%) |
| 会計上の営業利益率 | 10.8% | 10.8% |
SHIFTは単価を上げている。月曜に「日本でもいずれ客は値下げを求める」と書いたが、今のところSHIFTの単価は上がる方向にある。
EPAMは、売上がほとんど伸びない中で利益率を上げている。そして利益の伸びは、売上よりはるかに大きい。
| EPAM | 2025年4〜6月期 | 2026年4〜6月期 | 伸び |
|---|---|---|---|
| 売上 | 13.5億ドル | 14.2億ドル | +4.5% |
| 純利益 | 0.88億ドル | 1.03億ドル | +17% |
| 1株利益 | 1.56ドル | 1.97ドル | +26% |
1株利益が売上の5倍以上のペースで伸びているのは、自社株買いのためだ。EPAMは2026年1〜6月に4.09億ドルの自社株買いをし、発行済み株式数は半年で約5%減った。
売上が伸びない会社が、コストを削って利益率を上げ、稼いだお金で自社株を買う。これは成長企業というより、成熟した会社の動きだ。
物差し③:時間で請求しているか、成果で請求しているか
ここが、2社の今後を分けるところだ。
SHIFTは、AIを使った売上の割合を公表している。
| 項目 | 2026年8月期 |
|---|---|
| AIを使った売上の割合(通期) | 15.1% |
| 同(7〜8月期) | 28.4% |
| AIを使った案件の粗利率 | 42.3%〜54.7% |
AIを使った案件が、1年の最後の四半期には売上の3割近くになった。そしてその案件の粗利率は4〜5割ある。SHIFTは社内でもAIを使い、バックオフィスで113人分の仕事を減らした。
今期の計画も同じ方向を向いている。売上は1,900億円(前期比17.6%増)、調整後営業利益は250億円(23.4%増)で、利益を売上より速く伸ばす計画だ。営業担当は120人増やすが、社内の事務などを担う人員は増やさない方針だ。
EPAMも「AIネイティブ」の会社への転換を掲げ、客の現場にエンジニアを送り込む新しい組織を作ると説明している。ただ、それがまだ売上の伸びには表れていない。
どちらも、請求の中心は今も時間と人月だ。違うのは、SHIFTは単価が上がり、AIを使った案件の利益率が高いことを数字で示しているのに対し、EPAMはまだそれを売上の伸びで示せていないことだ。
評価を並べる
| 指標 | SHIFT | EPAM |
|---|---|---|
| 株価 | 1,128円 | 約136ドル |
| 時価総額 | 3,017億円 | 約71億ドル(約1.1兆円) |
| PER | 21.6倍(予想) | 18.6倍(実績)、約16倍(会社見通しから概算) |
| PBR | 6.94倍 | 約2.0倍(計算値) |
| ROE | 18.1% | 約12%(計算値) |
| 理論PBR(ROE÷8%) | 2.26倍 | 1.53倍 |
| 実際÷理論 | 3.07 | 1.32 |
| 成長倍率(PER÷12.5) | 1.73 | 約1.3 |
| 配当利回り | 0.46%(予想) | なし(自社株買い) |
※SHIFTは2026年10月27日時点。EPAMは直近の米国市場の値。円換算は1ドル=158円で概算。 ※EPAMのPBRは時価総額を6月末の株主資本35.2億ドルで割った計算値。ROEと会社見通しからのPERは、今期の会計上の1株利益の見通し(8.22〜8.38ドル)の中央値を使った概算。
EPAM:上乗せは小さく、安値からは2倍近くに戻っている
EPAMの実際÷理論は1.32で、月曜に見たアクセンチュアのような大きな上乗せはない。1年前の高値は222ドルあったが、AIへの不安で73ドルまで売られた。今はそこから2倍近くまで戻っている。
それでも高値の6割ほどだ。市場は、EPAMの成長がもう戻らないことを、ある程度は値段に入れている。
SHIFT:上乗せは大きいが、成長で説明できるか
SHIFTの実際÷理論は3.07で、上乗せは大きい。ROE18.1%でも、PBR6.94倍は理論の3倍の値段だ。
ただし、PERは21.6倍で、成長倍率は1.73にとどまる。今期の調整後営業利益が23%伸びる計画どおりに進むなら、PER21.6倍は成長を払いすぎた値段とは言えない。
注意すべきは、会計上の数字だ。2026年8月期の純利益は74億円で、前期から17%減った。買収に伴う費用やのれんの償却が重く、会社が強調する「調整後」の利益と、会計上の利益の間に開きがある。SHIFTの値段は、この開きが縮まり、調整後の利益が本当の稼ぐ力だと市場が信じていることの上に乗っている。
保有している立場から見て
SHIFTは保有している。含み損益は+77.92%だ。
上乗せが大きいことは認める。実際÷理論が3を超える銘柄は、割高かどうかで売るという自分のルールから見て、楽な値段ではない。
それでも売らない。理由は、物差しの3つに、SHIFTがそろって答えを出しているからだ。
- 人を増やし、それ以上に売上を伸ばしている
- 単価が上がり、今期は利益を売上より速く伸ばす計画だ
- AIを使った売上が3割近くまで増え、その利益率が高い
EPAMと並べると、違いはよく分かる。同じ人月ビジネスでも、EPAMは人も売上も止まり、自社株買いで1株利益を支えている。SHIFTは人も売上も単価も伸びている。米国でITサービス株が売られた理由が、SHIFTにはまだ当てはまっていない。
確かめ続けるのは2つだ。単価が上がり続けるか、そして調整後と会計上の利益の開きが縮まるか。単価が下がり始めたら、月曜に書いた「日本でもいずれ来る値下げ」が始まった合図になる。そのときは、この値段を払い続ける理由がなくなる。
EPAMは保有していない。上乗せは小さいが、売上が伸びない会社を自社株買いだけで持つ理由は、自分にはない。
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