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Week 12 — 核融合
2026.10.20  ·  火曜 / フジクラ(5803) 深掘り

フジクラ——核融合の材料を売り、核融合の会社を持つ。株価を動かすのはデータセンター

月曜に、核融合の部材メーカーを見る物差しを3つ立てた。

  1. 本業の利益で説明できる株価か
  2. 核融合の売上はどれだけあるか
  3. 核融合が実現しなかったら何が残るか

今日のフジクラは、この3つを試すのにいちばん分かりやすい会社だ。核融合の世界では、磁場型の「心臓部」の材料を納める主要サプライヤーの一つでありながら、会社の利益のほとんどは核融合とは別のところから来ている。

磁場型の心臓部、高温超電導線材

月曜に書いたとおり、磁場型の核融合は、強力な磁石で1億度を超えるプラズマを宙に浮かせて閉じ込める。その磁石を作るのに使われるのが、高温超電導線材だ。

超電導は、ある温度より冷やすと電気抵抗がゼロになる現象だ。抵抗がゼロなら、大きな電流を流しても熱が出ず、とても強い磁場を作れる。「高温」と言っても、超電導になる温度がマイナス180度前後というだけだ。従来の超電導材料はマイナス250度より低くしないと超電導にならないので、それに比べて「高温」と呼ばれている。

高温超電導線材を使うと、同じ強さの磁場を、ずっと小さな磁石で作れる。核融合装置を小さく、安く作れるようになる。米国のコモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)が、国際共同のITERよりはるかに小さな装置で核融合を目指せるのは、この材料があるからだ。

フジクラはこの線材を作っている。CFSが建設中の実証装置SPARC向けの供給パートナーの1社で、日本のHelical Fusionにも納めている。

増産投資は続いている

時期投資額内容
2024年度約60億円2027年度に生産能力を従来の約3〜4倍にする
2026年2月56億円生産能力をさらに約2倍に拡大する

会社は、高温超電導線材の生産能力を世界トップクラスに引き上げるとしている。

納めるだけでなく、持っている

フジクラは核融合の会社に出資もしている。

出資先内容
CFS(米国)2025年8月の約8.63億ドルの資金調達に、三井物産と三菱商事が率いる日本企業12社の連合の一員として参加
京都フュージョニアリング核融合の周辺機器を開発する日本のスタートアップ
Starlight Engine京都フュージョニアリングのグループ会社。トカマク型の実証プロジェクト「FAST」を統括し、2030年代の発電実証を目指す

CFSに線材を売る側であり、CFSの株主でもある。CFSが成功すれば、線材の売上と出資の価値の両方で得をする位置にいる。

対になる米国:CFS

CFSは、マサチューセッツ工科大学(MIT)発の核融合スタートアップで、未上場だ。

項目内容
方式磁場閉じ込め(トカマク型)。高温超電導磁石で装置を小型化
資金調達累計で約30億ドル。2025年8月に8.63億ドルを調達
主な出資者イタリアの石油大手エニ(筆頭株主)、グーグル、エヌビディアの投資部門、日本企業12社の連合など
実証装置SPARCマサチューセッツ州で建設中。2026年春に18基ある超電導磁石の1基目を据え付け、2027年の初プラズマを目指す
商用炉ARCバージニア州に建設予定。2030年代前半の送電開始を目指す。発電量の半分はグーグルが買い取る契約

日本企業12社の連合には、フジクラのほか、Week08の原子力で取り上げた関西電力、JERA、NTTなども入っている。核融合への期待は、日本ではこうした大企業の出資という形で表に出ている。

ただ、CFSの株は個人投資家には買えない。CFSに賭けたい個人投資家が上場株で選べるのは、フジクラのように「CFSに納めて、CFSに出資している」日本の会社になる。

物差し①:株価を動かしているのは、データセンター

ここで、フジクラの決算を見る。

項目2026年4〜6月期前年同期比
売上高4,020億円+50.1%
営業利益1,048億円+155.1%
純利益804億円+156.8%

通期の営業利益予想は、今期だけで2回引き上げられた。

時点通期の営業利益予想
期初2,110億円
6月の1回目の修正3,100億円
8月の2回目の修正4,320億円(前期比+128.9%)

理由は、データセンター向けの光コネクターなどの需要拡大だ。大手のクラウド企業からの想定外の受注や、米国以外での新しいデータセンター案件の大量受注が重なった。

4〜6月期の情報通信事業の営業利益は980億円で、会社全体の営業利益1,048億円の93.5%にあたる。フジクラの利益は、ほぼデータセンター向けの光部品が稼いでいる。

物差し②:核融合の売上は、まだ見えない

では、核融合はどれだけ稼いでいるのか。

高温超電導線材の売上は、決算の数字としては見えてこない。参考になるのは投資額だ。2回の増産投資は合わせて約116億円で、今期の営業利益予想4,320億円の約2.7%にすぎない。

CFSのSPARCが初プラズマを迎えるのは2027年、商用炉ARCの送電は2030年代前半だ。核融合向けの線材が利益に効いてくるのは、早くてもその先になる。

つまり、今のフジクラの株価は、核融合ではほとんど説明できない。データセンター向けの光部品の成長で説明する株価だ。

物差し③:核融合が実現しなかったら、何が残るか

答えは、データセンターの事業が残る。核融合が遅れても、フジクラの利益の9割以上はそのまま残る。

この点で、フジクラは核融合のテーマ株としては「安全」に見える。

ただし、先週の土曜を思い出す必要がある。日本電子材料とフォームファクターは、AI向けの半導体の「見通し」が揺らいだだけで1週間に2割近く下げた。フジクラの本業も、AIデータセンターへの投資という期待で伸びている事業だ。核融合が実現しなくても本業が残る、というのは、本業のAI期待が続く限りの話だ。

Week08の原子力では、「テーマを、やっている会社ほど安く、語っている会社ほど高い」という構図が見えた。フジクラは核融合を本当に「やっている」会社だ。それでも株価は核融合で高くなっているのではなく、AIで高くなっている。核融合は、フジクラの株価に乗っている「おまけ」の選択肢と見るのが正確だ。

評価を並べる

指標フジクラ
株価4,192円
時価総額7.4兆円
PER21.3倍(予想)
PBR12.41倍
ROE32.5%(実績)
理論PBR(ROE÷8%)4.06倍
実際÷理論3.05
配当利回り0.91%(予想)

※株価指標は2026年10月20日時点。 ※今期の予想1株利益は196.88円(会社予想、株式分割後)。年間配当予想は38円で、前期の225円(分割前)を1株を6株に分割した後に直すと37.5円にあたる。

PBRは12.41倍で、実績ROE32.5%から出した理論PBRの3倍を超える。数字だけ見れば、とても高い値段だ。

ただ、フジクラは今期の純利益が前期の2倍以上(3,260億円、+107.4%)になる見通しだ。この予想純利益を6月末の自己資本(約6,080億円)で割った予想ROEは約54%(概算)になり、理論PBRは6.70倍、実際÷理論は1.85まで下がる。予想PER21.3倍を成長織り込み倍率(予想PER÷12.5)に直すと1.70。今期の利益が予想どおり倍増しても、まだ株価にはその先の成長が上乗せされている。

市場は、データセンター向けの利益が来期以降も伸び続けることを前提に値段をつけている。核融合は、この上乗せの中にほとんど入っていない。

保有していない立場から見て

フジクラは保有していない。

核融合という視点から見ると、フジクラは「核融合に賭けるために買う株」ではない。核融合の売上はまだ見えず、利益の9割以上はデータセンターが稼いでいる。核融合に期待してフジクラを買うと、実際に持つことになるのは、AIデータセンターへの投資の行方だ。

値段の面でも、自分の買い方からは遠い。PBRは12倍を超え、配当利回りは1%を切る。割安なところを配当目当てで拾う銘柄ではない。そしてこの株価は、AIデータセンターの成長が来期以降も続くことが前提になっている。先週の日本電子材料のように、その見通しが揺らげば、上乗せ分ははがれる。この日も株価は前日比6.47%下げている。

逆に言えば、AIデータセンターの成長を信じてフジクラを持つ人にとって、核融合は追加料金なしでついてくる長期の選択肢になる。どちらを目的に持つのかで、同じ株の意味が変わる。

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