核融合——米国の本命は未上場、日本は部材で関わる
Week08で原子力・SMRを扱ったとき、核融合は混ぜずに別のテーマとして扱うと書いた。今週がその回だ。
先週の土曜、自分の持ち株で日本電子材料とフォームファクターが1週間で2割近く下げた。中国のメモリーのニュース一つで、今の受注ではなく「見通し」が揺らいだからだった。期待で値段がついている株は、期待が揺らいだ瞬間に同じ速さで戻る。
核融合は、その「期待」の究極の形だ。商業発電は早くて2030年代。今の売上にはほとんど出てこない技術に、市場は値段をつけている。今週は、その値段がどこに、どれだけついているのかを確かめる。
核融合とは何か
原子力発電(核分裂)は、ウランのような重い原子を割ってエネルギーを取り出す。核融合はその逆で、水素の仲間のような軽い原子をくっつけてエネルギーを取り出す。太陽が光っているのと同じ仕組みだ。
| 核分裂(今の原子力) | 核融合 | |
|---|---|---|
| 燃料 | ウラン | 重水素・三重水素など |
| 仕組み | 重い原子を割る | 軽い原子をくっつける |
| 暴走のしやすさ | 連鎖反応を止める仕組みが必要 | 条件が崩れると反応が止まる |
| 実用化 | 発電に使われている | 発電はまだ実現していない |
核融合を起こすには、燃料を1億度を超える高温のプラズマにして、閉じ込めておく必要がある。その閉じ込め方で、大きく2つの方式に分かれる。
| 方式 | やり方 | 民間企業の割合 |
|---|---|---|
| 磁場閉じ込め | 強力な磁石でプラズマを宙に浮かせて閉じ込める(トカマク型、ヘリカル型など) | 48% |
| 慣性閉じ込め | 燃料の粒にレーザーなどを一気に当てて圧縮する(レーザー型など) | 21% |
※米国の業界団体フュージョン産業協会(FIA)の2026年の調査より。残りはその他の方式。
この違いが、日本の部材メーカーの関わり方の違いになる。磁場型には強力な磁石の材料が、レーザー型には強力なレーザーがいる。
足元:お金は過去最高、時期は少しずつ後ろへ
FIAが2026年7月にまとめた報告書によると、民間の核融合企業が直近1年で集めた資金は約45億ドルで、前年から70%増えた。調査に答えた56社のうち71%が、最初の商業発電は2030年代になると見ている。
主な米国のプレイヤーを並べると、こうなる。
| 会社 | 方式 | 状況 | 上場 |
|---|---|---|---|
| コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS) | 磁場(トカマク型) | 実証装置SPARCに超電導磁石を据え付け中。2027年の初プラズマを目指す。2025年8月に8.63億ドルを調達 | 未上場 |
| ヘリオン・エナジー | 磁場(独自方式) | マイクロソフトとの契約は2028年末までに送電網につなぎ運転を始めること。2026年に「2028年に発電」の表記を「2028年に初期運転開始」に改め、フル出力は2029〜2030年以降と説明した | 未上場 |
| TAEテクノロジーズ | 磁場(独自方式) | トランプ・メディアとの約60億ドルの合併を2025年12月に発表。2026年10〜12月期までの完了を目指す。初の発電所は2031年の商業運転が目標 | 未上場(合併で上場予定) |
| ジェネラル・フュージョン | 磁場と圧縮の組み合わせ | 2026年7月13日に米ナスダックに上場(ティッカーGFUZ)。初日に一時約40%上昇 | 上場 |
※ジェネラル・フュージョンはカナダの企業。
お金は集まっている。一方で、ヘリオンが「2028年に発電」の言い方を「2028年に運転開始」に変えたように、時期は少しずつ後ろにずれている。期待が膨らむ一方で、実現の時期は遠ざかる。テーマ株としては、いちばん危うい組み合わせだ。
そしてもう一つ。本命と見られている会社の多くは、上場していない。CFSにもヘリオンにも、個人投資家は直接投資できない。
日本:国の後押しと、部材での関わり
日本では、2025年11月に高市内閣が「危機管理投資・成長投資」の17の戦略分野の一つに核融合を選んだ。2026年6月には自民党のプロジェクトチームが、約1,000億円規模の補正予算、スタートアップ支援として5年で約1,000億円、「フュージョンエネルギー推進法(仮称)」の制定などを提言している。政府が掲げる目標は、2030年代の発電実証だ。
ただ、日本の核融合スタートアップ(京都フュージョニアリング、Helical Fusion、EX-Fusionなど)も、ほとんどが未上場だ。
上場株で核融合に関わる日本の会社は、多くが「部材を納める側」にいる。
| 会社 | 何を納めるか | 方式 |
|---|---|---|
| フジクラ | 強力な磁石に使う高温超電導線材。CFSの実証装置SPARC向けの供給パートナーの1社で、Helical Fusionにも供給している | 磁場型 |
| 浜松ホトニクス | 大出力の半導体レーザー。2025年にEX-Fusionと燃料に連続でレーザーを当てる共同実験を行った | レーザー型 |
| 助川電気工業 | 原子力発電所向けの機器の製造・保守。核融合の研究装置向けの機器開発にも参画している | 研究装置全般 |
米国では本命が未上場で、日本では部材メーカーが上場している。今週の副題にした「未上場の米国勢を、日本の部材メーカーが支える」は、この構図のことだ。
評価の考え方:「核融合でいくら買われているか」
核融合の部材メーカーを見るときに難しいのは、核融合の売上がまだほとんど決算に出てこないことだ。
フジクラの本業は、データセンター向けの光ファイバーや光ケーブルだ。高温超電導線材には2024年度に約60億円、2026年2月にさらに56億円の設備投資を決めているが、会社全体の規模から見れば小さい。浜松ホトニクスの本業も、光センサーや医療・分析機器向けの部品だ。
つまり、核融合で株価が上がっているのか、本業で上がっているのかを、分けて見る必要がある。今週はそれぞれの会社で、次の3つを確かめる。
- 本業の利益で説明できる株価か:PER・PBR・ROEを、本業の成長と比べる
- 核融合の売上はどれだけあるか:決算や説明資料に出てくる数字を探す
- 核融合が実現しなかったら何が残るか:期待が剥がれたときに支えになる本業があるか
3つ目が、先週の土曜の教訓だ。期待が揺らいだとき、本業という支えがある会社とない会社では、下げ方が違ってくる。
Week08の原子力では、「テーマを、やっている会社ほど安く、語っている会社ほど高い」という構図が見えた。核融合でも同じことが起きているのかを確かめる。
今週の予定
| 曜日 | 日本 | 対になる米国 | 見る点 |
|---|---|---|---|
| 火 | フジクラ | CFS(未上場) | 磁場型の心臓部、高温超電導線材 |
| 水 | 浜松ホトニクス | コヒーレント(上場) | レーザー型を支える大出力レーザー。どちらも本業は光の部品 |
| 木 | 助川電気工業 | ジェネラル・フュージョン(上場) | 核融合に最も近い小型株と、上場した純粋な核融合企業 |
各銘柄の指標は、それぞれの個別記事で最新の数字を確認する。
金曜は、ここに古河電工や住友電工など、ほかの部材メーカーも加えて横並びにする予定だ。米国側は上場している核融合関連の会社が少ないので、未上場の会社については資金調達額や企業価値の報道で比べる。
3社とも保有していない。今週は全社、保有していない立場から見る。
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