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Week 12 — 核融合
2026.10.19  ·  月曜 / テーマ解説

核融合——米国の本命は未上場、日本は部材で関わる

Week08で原子力・SMRを扱ったとき、核融合は混ぜずに別のテーマとして扱うと書いた。今週がその回だ。

先週の土曜、自分の持ち株で日本電子材料とフォームファクターが1週間で2割近く下げた。中国のメモリーのニュース一つで、今の受注ではなく「見通し」が揺らいだからだった。期待で値段がついている株は、期待が揺らいだ瞬間に同じ速さで戻る。

核融合は、その「期待」の究極の形だ。商業発電は早くて2030年代。今の売上にはほとんど出てこない技術に、市場は値段をつけている。今週は、その値段がどこに、どれだけついているのかを確かめる。

核融合とは何か

原子力発電(核分裂)は、ウランのような重い原子を割ってエネルギーを取り出す。核融合はその逆で、水素の仲間のような軽い原子をくっつけてエネルギーを取り出す。太陽が光っているのと同じ仕組みだ。

核分裂(今の原子力)核融合
燃料ウラン重水素・三重水素など
仕組み重い原子を割る軽い原子をくっつける
暴走のしやすさ連鎖反応を止める仕組みが必要条件が崩れると反応が止まる
実用化発電に使われている発電はまだ実現していない

核融合を起こすには、燃料を1億度を超える高温のプラズマにして、閉じ込めておく必要がある。その閉じ込め方で、大きく2つの方式に分かれる。

方式やり方民間企業の割合
磁場閉じ込め強力な磁石でプラズマを宙に浮かせて閉じ込める(トカマク型、ヘリカル型など)48%
慣性閉じ込め燃料の粒にレーザーなどを一気に当てて圧縮する(レーザー型など)21%

※米国の業界団体フュージョン産業協会(FIA)の2026年の調査より。残りはその他の方式。

この違いが、日本の部材メーカーの関わり方の違いになる。磁場型には強力な磁石の材料が、レーザー型には強力なレーザーがいる。

足元:お金は過去最高、時期は少しずつ後ろへ

FIAが2026年7月にまとめた報告書によると、民間の核融合企業が直近1年で集めた資金は約45億ドルで、前年から70%増えた。調査に答えた56社のうち71%が、最初の商業発電は2030年代になると見ている。

主な米国のプレイヤーを並べると、こうなる。

会社方式状況上場
コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)磁場(トカマク型)実証装置SPARCに超電導磁石を据え付け中。2027年の初プラズマを目指す。2025年8月に8.63億ドルを調達未上場
ヘリオン・エナジー磁場(独自方式)マイクロソフトとの契約は2028年末までに送電網につなぎ運転を始めること。2026年に「2028年に発電」の表記を「2028年に初期運転開始」に改め、フル出力は2029〜2030年以降と説明した未上場
TAEテクノロジーズ磁場(独自方式)トランプ・メディアとの約60億ドルの合併を2025年12月に発表。2026年10〜12月期までの完了を目指す。初の発電所は2031年の商業運転が目標未上場(合併で上場予定)
ジェネラル・フュージョン磁場と圧縮の組み合わせ2026年7月13日に米ナスダックに上場(ティッカーGFUZ)。初日に一時約40%上昇上場

※ジェネラル・フュージョンはカナダの企業。

お金は集まっている。一方で、ヘリオンが「2028年に発電」の言い方を「2028年に運転開始」に変えたように、時期は少しずつ後ろにずれている。期待が膨らむ一方で、実現の時期は遠ざかる。テーマ株としては、いちばん危うい組み合わせだ。

そしてもう一つ。本命と見られている会社の多くは、上場していない。CFSにもヘリオンにも、個人投資家は直接投資できない。

日本:国の後押しと、部材での関わり

日本では、2025年11月に高市内閣が「危機管理投資・成長投資」の17の戦略分野の一つに核融合を選んだ。2026年6月には自民党のプロジェクトチームが、約1,000億円規模の補正予算、スタートアップ支援として5年で約1,000億円、「フュージョンエネルギー推進法(仮称)」の制定などを提言している。政府が掲げる目標は、2030年代の発電実証だ。

ただ、日本の核融合スタートアップ(京都フュージョニアリング、Helical Fusion、EX-Fusionなど)も、ほとんどが未上場だ。

上場株で核融合に関わる日本の会社は、多くが「部材を納める側」にいる。

会社何を納めるか方式
フジクラ強力な磁石に使う高温超電導線材。CFSの実証装置SPARC向けの供給パートナーの1社で、Helical Fusionにも供給している磁場型
浜松ホトニクス大出力の半導体レーザー。2025年にEX-Fusionと燃料に連続でレーザーを当てる共同実験を行ったレーザー型
助川電気工業原子力発電所向けの機器の製造・保守。核融合の研究装置向けの機器開発にも参画している研究装置全般

米国では本命が未上場で、日本では部材メーカーが上場している。今週の副題にした「未上場の米国勢を、日本の部材メーカーが支える」は、この構図のことだ。

評価の考え方:「核融合でいくら買われているか」

核融合の部材メーカーを見るときに難しいのは、核融合の売上がまだほとんど決算に出てこないことだ。

フジクラの本業は、データセンター向けの光ファイバーや光ケーブルだ。高温超電導線材には2024年度に約60億円、2026年2月にさらに56億円の設備投資を決めているが、会社全体の規模から見れば小さい。浜松ホトニクスの本業も、光センサーや医療・分析機器向けの部品だ。

つまり、核融合で株価が上がっているのか、本業で上がっているのかを、分けて見る必要がある。今週はそれぞれの会社で、次の3つを確かめる。

  1. 本業の利益で説明できる株価か:PER・PBR・ROEを、本業の成長と比べる
  2. 核融合の売上はどれだけあるか:決算や説明資料に出てくる数字を探す
  3. 核融合が実現しなかったら何が残るか:期待が剥がれたときに支えになる本業があるか

3つ目が、先週の土曜の教訓だ。期待が揺らいだとき、本業という支えがある会社とない会社では、下げ方が違ってくる。

Week08の原子力では、「テーマを、やっている会社ほど安く、語っている会社ほど高い」という構図が見えた。核融合でも同じことが起きているのかを確かめる。

今週の予定

曜日日本対になる米国見る点
火フジクラCFS(未上場)磁場型の心臓部、高温超電導線材
水浜松ホトニクスコヒーレント(上場)レーザー型を支える大出力レーザー。どちらも本業は光の部品
木助川電気工業ジェネラル・フュージョン(上場)核融合に最も近い小型株と、上場した純粋な核融合企業

各銘柄の指標は、それぞれの個別記事で最新の数字を確認する。

金曜は、ここに古河電工や住友電工など、ほかの部材メーカーも加えて横並びにする予定だ。米国側は上場している核融合関連の会社が少ないので、未上場の会社については資金調達額や企業価値の報道で比べる。

3社とも保有していない。今週は全社、保有していない立場から見る。

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