助川電気工業——核融合にいちばん近い小型株は、ちょうど1年前が天井だった
火曜のフジクラも、水曜の浜松ホトニクスも、核融合に本気で取り組んでいる会社だった。ただ、どちらも会社全体から見れば核融合は小さく、株価を動かしていたのは別の事業だった。
今日は、核融合にもっと近い2社を見る。日本からは助川電気工業、米国市場からはジェネラル・フュージョンだ。
そして2社には、もう一つ共通点がある。どちらも、核融合への期待がいちばん高かったときから、株価が半分以下になっている。
助川電気工業:何を作っている会社か
助川電気工業は、茨城県高萩市に工場を持つ、売上60億円規模の会社だ。作っているのは「熱と温度」に関わる機器で、ヒーターや温度センサー(熱電対)、そして溶けた金属を扱う機器がある。
2025年9月期の売上は、2つの事業でほぼ半分ずつになっている。
| 事業 | 売上 | 構成比 | 前期比 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー関連 | 27.6億円 | 約50% | +23.9% | 原子力発電所や研究機関の装置の温度制御、溶融金属機器 |
| 産業システム関連 | 26.8億円 | 約49% | +1.2% | 半導体・液晶の製造装置の「熱と計測」部分 |
売上の約45%は原子力関連で、約25%は半導体・液晶の製造装置関連だ。
核融合との関わり
伸びているのはエネルギー関連だ。会社は、原子力に加えて核融合関連の製品が増えたことを理由に挙げている。中身は、研究機関向けの溶融金属ループ(溶けた金属を循環させる試験装置)などだ。核融合炉では、炉の内側の壁や、熱を取り出す部分に溶けた金属を使う研究が進んでいる。助川電気工業は、溶融金属を扱う技術でそこに関わっている。
数字にも表れている。
| 項目 | 2025年9月期 |
|---|---|
| 量子科学技術研究開発機構(量研機構)向けの売上 | 7.27億円(全売上の13.3%) |
| エネルギー関連の受注高 | 41.5億円(前期比+87.2%) |
| エネルギー関連の受注残高 | 35.5億円(前期比+64.2%) |
量研機構は、日本の核融合研究の中心にいる機関で、茨城県那珂市の実験装置JT-60SAを運営している。ここが販売先の上位に入っている(量研機構は核融合以外の研究も行っているので、全額が核融合向けとは限らない)。
会社は、次世代の原子炉と核融合に関する試験研究が、2026年以降も業績を「引き続き牽引する」と見ている。
フジクラや浜松ホトニクスと比べて、核融合が決算の数字にいちばん近いところに出ている会社だ。
業績は伸びている
| 項目 | 2026年9月期(予想) | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 60.7億円 | +11.0% |
| 営業利益 | 12.8億円 | +9.9% |
| 純利益 | 9.0億円 | +13.7% |
| 年間配当 | 52円 | 前期40円から12円増配 |
6月までの9カ月で、純利益は前年同期比13.8%増えている。派手さはないが、売上も利益も配当も伸びている。
それなのに、株価は1年前の3分の1になった
| 時点 | 株価 |
|---|---|
| 上場来高値(2025年10月21日) | 12,250円 |
| 2026年の年初来高値(2月9日) | 9,890円 |
| 2026年の年初来安値(7月29日) | 4,030円 |
| 現在(2026年10月22日) | 4,315円 |
上場来高値をつけた2025年10月21日は、高市内閣が発足した日だ。翌11月には核融合が国の17の戦略分野の一つに選ばれる。その流れの中で、核融合関連の小型株として注目を集めていた。
その高値から、今は約65%下にいる。
今期の予想1株利益(163.74円)で計算しても、高値のときのPERは約75倍だった。今は26倍台まで下がっている。その間、会社の業績は落ちていない。受注はむしろ大きく伸びている。
下がったのは業績ではなく、期待の大きさだ。
対になる米国市場:ジェネラル・フュージョン
ジェネラル・フュージョンは、カナダの核融合スタートアップだ。2026年7月に特別買収目的会社(SPAC)との合併で米ナスダックに上場し、「最初の上場した純粋な核融合企業」になった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | 磁化標的核融合。プラズマを金属の壁で包み、その壁ごと一気に押しつぶして加熱する。商用炉の構想では、溶けた金属の壁を使う |
| 実証装置 | LM26。2026年6月にプラズマを約840万度まで圧縮。次の目標は約1,000万度、その先に1億度 |
| 上場 | 2026年7月10日に合併完了、13日に取引開始。初値12.80ドル |
| 手元資金 | 上場時に約1.5億ドル。SPACの投資家の多くが株を現金に換えたため、最大3.35億ドルの想定を大きく下回った |
| 資金の見通し | LM26の計画を2028年まで賄える |
| 商用炉 | 2035年までの実現を長期目標に掲げる |
株価は、上場直後の高値14.85ドルから、今は6ドル台まで下がっている。上場から3カ月で、半分以下になった。
助川電気工業とジェネラル・フュージョンが似ているところ
2社は、溶けた金属を扱うという点でも重なる。ジェネラル・フュージョンは商用炉で溶けた金属の壁を使う構想を持ち、助川電気工業は溶けた金属を扱う試験装置を研究機関に納めている。
そしてどちらも、核融合への期待がいちばん高かったときから、株価が半分以下になった。
ただ、決定的に違うところがある。
物差し①〜③で並べる
月曜に立てた3つの物差しで、2社を並べる。
| 物差し | 助川電気工業 | ジェネラル・フュージョン |
|---|---|---|
| ①本業の利益で説明できる株価か | 純利益9億円で、PER26倍台。説明できる水準に近づいた | 利益はなく、売上もない。説明できる利益がない |
| ②核融合の売上はどれだけあるか | 決算に表れ始めている(量研機構向け13.3%、受注+87%) | 会社のすべてが核融合。ただし売上はまだない |
| ③核融合が実現しなかったら何が残るか | 原子力向け・半導体製造装置向けのヒーターや温度センサーの事業 | 手元の現金 |
ジェネラル・フュージョンは、核融合が実現しなければ何も残らない。持つことになるのは、2035年の商用炉に向けた研究開発の行方そのものだ。
助川電気工業は、核融合が実現しなくても、原子力と半導体の「熱と計測」の事業が残る。そしてその事業の上に、核融合の研究装置向けの受注が少しずつ積み上がっている。
評価を並べる
| 指標 | 助川電気工業 | ジェネラル・フュージョン |
|---|---|---|
| 時価総額 | 253.3億円 | 約3.9億ドル(約611億円) |
| PER | 26.4倍(予想) | なし(赤字) |
| PBR | 4.87倍 | ― |
| ROE | 17.4% | マイナス |
| 理論PBR(ROE÷8%) | 2.18倍 | ― |
| 実際÷理論 | 2.24 | ― |
| PSR(時価総額÷売上) | 4.2倍(今期予想売上ベース) | なし(売上なし) |
| 配当利回り | 1.21%(予想) | なし |
※助川電気工業は2026年10月22日時点、ジェネラル・フュージョンは直近の米国市場の値。円換算は1ドル=158円で概算。 ※ジェネラル・フュージョンのPBRは、純資産の数字を確認できなかったため載せていない。時価総額は、上場時の手元資金約1.5億ドルの約2.6倍にあたる。
助川電気工業の実際÷理論は2.24。ROE17.4%という高い稼ぐ力に対して、さらに2倍強の上乗せがついている。成長織り込み倍率(予想PER÷12.5)は2.11だ。今期の利益の伸び(+13.7%)から見れば、まだ核融合への期待が上乗せされている。
ただ、その上乗せは1年前に比べてずっと小さくなった。PERが75倍だったときは、ほぼ期待だけで値段がついていた。今は、本業の利益で説明できる部分が大きくなっている。
ジェネラル・フュージョンは、時価総額が手元資金の約2.6倍。差の約2.4億ドルが、核融合が実現することへの期待の値段だ。
Week08の構図と、先週の教訓
Week08の原子力では、「テーマを、やっている会社ほど安く、語っている会社ほど高い」という構図が見えた。
今週の4社で並べ直すと、こうなる。
| 会社 | 核融合との近さ | 株価を動かしているもの |
|---|---|---|
| フジクラ | 主要サプライヤー、CFSの株主 | AIデータセンター |
| コヒーレント | 米国の実験施設に部品を納入 | AIデータセンター |
| 浜松ホトニクス | レーザー核融合の最前線 | 本業の回復 |
| 助川電気工業 | 研究装置向けの受注が決算に表れる | 核融合への期待(ただし縮小した) |
| ジェネラル・フュージョン | 会社のすべてが核融合 | 核融合への期待そのもの |
核融合への期待で直接値段がついているのは、下の2社だけだ。そしてその2社が、ここ1年でいちばん大きく下げた。
先週の土曜に、「期待で値段がついている株は、期待が揺らいだ瞬間に同じ速さで戻る」と書いた。助川電気工業とジェネラル・フュージョンは、その「戻る」をすでに経験した株だ。
保有していない立場から見て
助川電気工業もジェネラル・フュージョンも保有していない。
ジェネラル・フュージョンは、自分の買い方の対象にはならない。売上も利益もなく、商用炉は2035年の目標だ。持つことになるのは研究開発の成否そのもので、配当もない。
助川電気工業は、1年前とはまったく違う株になった。高値のときはPER75倍の期待株だったが、今は利益が伸び、配当も増え、受注も積み上がっている会社に、PER26倍の値段がついている。それでもROEに対する上乗せは2倍を超え、配当利回りは1.2%にとどまる。割安なところを配当目当てで拾う銘柄にはまだ遠い。
ただ、この会社を見るときの物差しははっきりした。核融合への期待ではなく、受注残が売上と利益に変わっていくかどうかだ。11月に発表される2026年9月期の決算で、受注と来期の見通しを確認する。
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