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Week 11 — 海外金融
2026.10.16  ·  木曜 / バークシャー・ハサウェイ(BRK.B) 深掘り

バークシャー・ハサウェイ——持ち続ける会社と、買って売る会社

月曜に、木曜のバークシャー・ハサウェイは「預金ではなく保険料(フロート)という、金利をほとんど払わなくていいお金で投資をしている会社」だと予告した。

今週ここまで、お金の集め方を2つ見てきた。JPモルガンは預金に約1.7%を払い、アメックスは約3.3%を払っている。今日のバークシャーは、集めたお金に金利を払っていない。それどころか、預かっているだけで利益が出ている。

そしてもう一つ、バークシャーには「買った会社を売らない」という特徴がある。対になるのは、保有しているオリックスだ。同じように保険を抱え、いくつもの事業を持つ会社でありながら、オリックスは育てた会社を売って次に回す。持ち続ける会社と、買って売る会社。今日はこの二つを並べる。

※バークシャーの7〜9月期決算は11月初めに発表予定のため、本記事は4〜6月期の数字を使う。

どちらも純利益が2倍以上になった

最初に、両社の直近の四半期決算を並べる。

バークシャー(2026年4〜6月期)オリックス(2026年4〜6月期)
純利益256.7億ドル(+107%)2,808億円(+161.8%)
主な理由保有株の評価益キオクシア株の売却益・評価益
会社が見てほしい利益営業利益129.8億ドル(+16%)調整後利益(キオクシア関連を除く)

どちらも純利益が倍以上に増えた。そして、どちらの会社も「その数字は本業の実力ではない」と自分で断っている。

バークシャーは決算発表のたびに、保有株の値動きで出る評価益は四半期の業績を示すものではないと書く。オリックスは、持分法適用会社を通じて計上するキオクシア株の売却益・評価益について、現金の回収を伴わないと明記し、配当の計算からも外している。

利益の出方が派手でぶれやすいところまで、二社はよく似ている。違いは、その利益をどこから生み出しているかにある。

バークシャー:金利を払わないお金を、短期国債に置く

フロートは「タダで借りているお金」

保険会社は、事故が起きる前に保険料を受け取り、保険金は後から払う。その間、手元にお金が残る。これがフロートだ。バークシャーのフロートは6月末で約1,775億ドルある。

このお金には金利がかからない。むしろ、保険の引き受けそのもので利益が出ていれば、お金を預かりながら利益までもらっていることになる。4〜6月期の保険引き受け利益は17.3億ドル(税引後)だった。

今週見てきた3社の「集めたお金のコスト」を並べると、こうなる。

会社お金の集め方集めたお金のコスト
JPモルガン預金(4分の1は金利ゼロ)約1.7%
アメックス預金(大半はネットの高金利預金)約3.3%
バークシャー保険のフロート0%以下(引き受けで利益が出ている)

預金ベータという物差しで言えば、バークシャーのフロートは金利が上がっても1円もコストが増えないお金だ。

SVBと正反対の置き方

もう一つ、月曜のSVBと比べたいのが、お金の置き方だ。

SVBは集めた預金を利回りの低い長期債に回し、金利が上がったところで巨額の含み損を抱えた。バークシャーは逆で、手元の資金の大半を短期の米国債に置いている。6月末の時点で、保険とその他の事業が持つ現金と短期国債は約3,600億ドル、そのうち短期国債が約3,249億ドルだ。

短期国債は満期がすぐ来るので、金利が上がっても含み損はほとんど出ない。それどころか、満期が来るたびに高い利回りで買い直せるので、金利が上がるほど利息収入が増える。4〜6月期の保険の運用収益は30.6億ドル(税引後)で、前年の33.7億ドルから減ったのは、主に2025年後半の利下げで短期金利が下がっていたためだ。9月に利上げが始まった今、同じ仕組みが逆向きに働く。

同じ「金利上昇」でも、SVBにとっては命取りになり、バークシャーにとっては追い風になる。違いは、お金の集め方と置き方の両方にある。

買った会社は、売らない

バークシャーのもう一つの特徴は、子会社を手放さないことだ。鉄道のBNSF、電力のバークシャー・ハサウェイ・エナジー、保険のGEICO。買収した会社は基本的に持ち続ける。売買することがあるのは上場株の一部で、それも長く持つことが前提になっている。

4〜6月期の営業利益の内訳を見ると、保険以外の事業が大きな柱になっている。

事業営業利益(税引後)前年同期比
保険の引き受け17.3億ドル-13%
保険の運用収益30.6億ドル-9%
鉄道(BNSF)15.6億ドル+6%
電力(BHE)8.9億ドル+27%
製造・サービス・小売44.7億ドル+24%
その他12.7億ドル―
合計129.8億ドル+16%

株主への還元は、配当を出さず自社株買いだけで行う。4〜6月期の自社株買いは約45億ドルで、株価が本来の価値を下回っていると判断したときにだけ買う決まりになっている。

2026年1月からは、ウォーレン・バフェットに代わってグレッグ・アベルがCEOを務めている。バフェットは会長として残った。

ちなみに、水曜に取り上げたアメックスの発行済株式の22.5%を持つ大株主は、このバークシャーだ。保有上場株の上位5銘柄に入っている。アメックスのように、強い事業を持つ会社を長く持ち続けるのがバークシャーのやり方だ。

オリックス:育てた会社を売って、次に回す

オリックスは、バークシャーと逆のやり方で稼いでいる。

会社やビル、事業を買い、価値を高めてから売る。その売却益(キャピタルゲイン)が利益の柱の一つになっている。今期の計画では、キャピタルゲインを2,500億円、資産の売却などで入ってくる現金を1兆2,000億円、新たな投資に回す現金を8,000億円以上と見込んでいる。4〜6月期だけで、足場レンタルの杉孝や米国のPE投資先の売却などで1,157億円のキャピタルゲインを出した。

中期経営計画(2026年3月期〜2028年3月期)では、2028年3月期に「持続的なROE11%」を目標に掲げ、低収益の資産を入れ替えていく方針を示している。

オリックス銀行も「売った」

その象徴が、オリックス銀行の売却だ。2026年4月に大和証券グループの大和ネクスト銀行への譲渡を発表し、8月3日に完了した。譲渡額は3,700億円で、今期に約1,242億円の売却益を計上する予定だ。

オリックス銀行は総資産約3兆円と、グループの総資産の大きな部分を占めていた。一方で、セグメント利益に占める割合は5%程度にとどまっていた。先週の木曜には、これを「預金ベータの高い銀行を手放した」と読んだ。

今日の比較で見ると、もう一つの意味が見える。資産は大きいのに利益の小さい事業を売って、その資金を次の投資と株主還元に回す。ROEを上げるための入れ替えだ。

保険は、オリックスにもある

オリックスもオリックス生命という保険会社を持っている。4〜6月期の保険事業の利益は280億円で、前年から16%増えた。運用収益の増加も効いている。

ただし、グループの中での位置づけはバークシャーとまるで違う。バークシャーにとって保険は、フロートを生み出してグループ全体の投資の元手になる中心の事業だ。オリックスにとって保険は、リースや不動産や投資と並ぶ柱の一つで、グループの主な資金調達は今も借入と社債が中心になっている。

二社を並べる

バークシャーオリックス
投資の元手保険のフロート(コスト0%以下)借入・社債が中心
子会社基本的に売らない育てて売る(今期キャピタルゲイン計画2,500億円)
余った資金短期国債に置いて待つ(約3,249億ドル)次の投資と株主還元に回す
株主還元無配、自社株買いのみ配当(予想187.36円)+自社株買い
本業の利益の見方営業利益(評価益を除く)調整後利益(キオクシア関連を除く)

バークシャーは、タダで集めたお金を、安全な場所に置いて待てる会社だ。良い買い物が見つかるまで何年でも待ち、買ったら持ち続ける。

オリックスは、借りたお金で買い、育てて売り、その資金で次を買う。お金を寝かせておけば調達コストだけがかかるので、回し続けることで稼ぐ。

待てる会社と、回し続ける会社。どちらが優れているかではなく、お金の集め方が違うから、使い方も違ってくる。

評価を並べる

指標バークシャー(B株)オリックス
時価総額約1.13兆ドル(約179兆円)約6.4兆円
PER23.5倍(営業利益ベース)11.9倍(予想)
PBR1.51倍(計算値)1.41倍
ROE6.6%(営業利益ベース)10.4%
理論PBR(ROE÷8%)0.83倍1.30倍
実際÷理論1.831.08
配当利回りなし(無配)3.27%(予想)

※2026年10月15日時点(バークシャーは直近の米国市場の値)。円換算は1ドル=158円で概算。 ※バークシャーのPER・PBR・ROEは会社開示から計算した値。営業利益は直近12カ月で480億ドル(2025年通期444.9億ドル-2025年上期208.0億ドル+2026年上期243.3億ドル)。PBRは時価総額を6月末の株主資本7,479億ドルで割った。ROEは営業利益を前年末と6月末の株主資本の平均で割った。 ※オリックスのROEはデータソースの実績値。

バークシャーは、営業利益で見るとROEが6.6%しかなく、理論PBRは0.83倍にとどまる。実際のPBRは1.51倍なので、1.83倍の上乗せがついているように見える。

ただ、これはバークシャーの形を考えると当然の結果だ。株主資本の中には、約3,600億ドルの現金と短期国債、そして時価で計上された巨額の保有株が入っている。保有株の値上がり分は営業利益には入らず、評価益として純利益にだけ出てくる。評価益を含めた直近12カ月の純利益(858億ドル)で計算し直すと、ROEは11.7%、理論PBRは1.46倍で、実際÷理論は1.03になる。

営業利益で見れば割高、純利益で見ればほぼROEどおり。どちらが正しいかではなく、バークシャーの価値の大きな部分が、毎期の営業利益ではなく保有株と現金の山にあるということだ。市場は、その現金を良い買い物が出たときに使える力として評価している。

オリックスは、実績ROE10.4%に対して実際÷理論が1.08。今期の予想純利益5,300億円を6月末の株主資本4兆7,104億円で割った予想ROE(約11.3%)で計算すると、理論PBRは1.41倍で、実際のPBRとぴったり並ぶ。ROEどおりの値段がついている。ただし、予想PERの11.9倍は、キャピタルゲイン2,500億円の計画を含んだ利益で計算されている。毎期の売却益が続く前提の値段だ。

保有していない立場から見て(バークシャー)

バークシャーは保有していない。

今週の3社のうち、月曜のSVBと正反対の位置にいるのがバークシャーだった。お金の集め方はコストがかからず、置き方は金利が上がるほど得をする。金利のある世界で、これほど有利な形を作っている金融の会社はほかにない。

ただ、バークシャーは配当を出さない。株主への還元は自社株買いだけで、受け取れるのは株価の値上がりだけだ。配当を目当てに割安なところを拾うという自分の買い方とは、そもそも噛み合わない。営業利益で見たPBRの上乗せも大きい。良い会社だと分かっても、自分の買い方の外にある会社だ。

保有している立場から(オリックス)

保有中(含み損益 +215.6%/取得単価 約1,813円)

オリックスは配当目当てで保有している。

配当株を売るのは、無配・減配、または経営不振で配当株として見られなくなったときだ。オリックスはその逆を進んでいる。今期の年間配当予想は187.36円で、前期の156.10円から約20%増える。配当方針も、調整後1株利益の39%か、前期の156.10円のどちらか高い方に改めた。前期の配当が事実上の下限になったということだ。水曜のジャックスが配当性向89.5%で下限200円を守っているのとは、余裕がまるで違う。

一方で、売るかどうかは、その時点で割高かどうかで判断する。取得単価約1,813円に対して株価は5,721円で、含み損益は+215.6%まで膨らんだ。それでも、実際÷理論は実績ROEで1.08、予想ROEで1.00と、ROEどおりの値段にとどまっている。含み益が大きいことと、割高であることは別だ。今の株価は割高とは言えない。持ち続ける。

気をつけるのは、そのROEが売却益に支えられていることだ。オリックスのROEは、何を売るかで毎期変わる。バークシャーのように現金を積んで待つのではなく、売って回し続けることで保っている数字だ。売るものが尽きるか、売り値が下がれば、ROEも配当も下がる。

オリックスの利益は、何を売ったかで毎期大きくぶれる。今期は上期の純利益予想が8,400億円なのに、通期予想は5月時点の5,300億円のまま据え置かれている。キオクシア株の値動きが読めないためだ。決算の数字そのものより、調整後の利益と配当の水準がどう動くかを追う。

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