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Week 11 — 海外金融
2026.10.17  ·  金曜 / 金融10社比較

金融10社比較——「お金の集め方」と「何を売るか」で並べ直す

今週は、SVBの破綻から始めて、米国の金融を3社見てきた。先週の日本の金融株と合わせて、見えてきたことは3つある。

  1. お金の集め方で、金利上昇の意味が変わる。預金ベータの低い銀行にとって利上げは追い風になり、借入に頼るノンバンクにとっては逆風になる(月曜・火曜)
  2. ただし、何を売っているかがそれ以上に効く。アメックスは預金に政策金利並みの金利を払っても、稼ぎの4分の3が手数料なのでROEは36%になる(水曜)
  3. 集めたお金のコストが、使い方を決める。金利を払わないフロートを持つバークシャーは現金を積んで待てる。借入に頼るオリックスは、売って回し続ける(木曜)

今日はここに、予告していた損保とネット金融の日米4社を加え、10社を3つの表で並べ直す。

新しく加える4社

分野日本米国
損保MS&ADインシュアランスグループHD(保有)チャブ
ネット金融楽天グループ(保有)SoFiテクノロジーズ

損保の2社は、木曜のバークシャーと同じく保険料(フロート)を運用する会社だ。チャブは世界最大級の上場損害保険会社で、バークシャーが2024年に株式の保有を明らかにし、その後も買い増している。

ネット金融の2社は、どちらもネットで預金を集める銀行を持ち、カードやローン、証券を一つのアプリにまとめようとしている。

表1:お金をどこから、いくらで集めているか

会社主な調達集めたお金のコスト
バークシャー保険のフロート(約1,775億ドル)0%以下(引き受けで利益)
チャブ保険のフロート0%以下(引き受けで利益)
MS&AD保険のフロート引き受けで利益
三菱UFJ預金普通預金0.4%(11月から0.5%)
楽天グループ楽天銀行の預金(13.3兆円)普通預金0.5%へ引き上げ(証券連携で最大0.58%)
JPモルガン預金(4分の1は金利ゼロ)約1.7%
SoFiネット預金(455億ドル)約3.1%
アメックスネット預金(約7割)と社債約3.3%
オリックス借入・社債が中心市場金利で調達
ジャックス借入・社債(有利子負債約2.8兆円)市場金利で調達、約3割が変動金利

※保険3社の「コスト」は、保険の引き受けで利益が出ているかどうかで判断した。4〜6月期の損害保険の合算比率(保険金と経費÷保険料)はチャブが83.8%で、100%を下回っている。MS&ADも保険サービス損益は2,092億円の黒字。 ※日本の預金は普通預金金利のみ、米国は預金全体の平均。日米の政策金利は1.25%と3.75〜4.00%で水準が違うので、横並びの比較ではなく、同じ国の中での位置を見る。

上に行くほど、集めたお金が安い。下に行くほど、金利が上がったときに調達コストが上がりやすい。

日米どちらでも、一番上に保険、真ん中に預金、一番下に借入が並ぶ。今週の言葉で言えば、上ほど「預金ベータが低い」お金を持っている。

ネット金融は「預金を持てるか」の競争

表1でいちばん動きがあるのは、ネット金融の2社だ。

SoFiは、ネットで集めた預金の平均金利が3.07%と、アメックスと同じく政策金利に近い水準を払っている。それでも、銀行の免許を取って預金を集めるようになる前は、ローンの資金を「ウェアハウス」と呼ばれる銀行からの借入枠で賄っていた。その金利は4.63%で、預金の方が1.56%安い。会社はこの差で、年間約7億ドルの利払いを減らしていると説明している。

楽天グループも同じ方向に動いた。2026年10月1日、楽天カードと楽天証券を楽天銀行の傘下に移す再編を実施した。楽天カードはこれまで外部から借りていた資金を、親会社になった楽天銀行からの借入に置き換えていく。楽天銀行には13.3兆円の預金がある。

ここで、水曜のジャックスを思い出す。同じカード・信販の会社でも、ジャックスは預金を集められないので、銀行からの借入と社債で調達するしかない。楽天カードは、グループの銀行の預金を使えるようになった。預金を持つカード会社と、持たないカード会社。金利が上がる局面では、この差がそのまま利益の差になる。

ジャックスにとっての答えは、三菱UFJとの資本関係を深めることなのかもしれない。

表2:何で稼いでいるか

会社主な稼ぎ金利上昇の影響
JPモルガン利ざや、投資銀行・市場部門の手数料追い風(ただし振れ幅は小さい)
三菱UFJ利ざや、海外銀行、モルガン・スタンレーの持分利益追い風
アメックス加盟店手数料・年会費(約4分の3)ほぼ中立
ジャックス分割払い・ローンの立て替え逆風
バークシャー保険、鉄道・電力・製造小売、短期国債の利息追い風(短期国債の利息が増える)
オリックスリース・不動産・保険・投資と売却益事業ごとに逆方向
チャブ保険の引き受けと運用追い風(4〜6月期の運用収益+12%)
MS&AD保険の引き受けと運用、政策保有株の売却益追い風(4〜6月期の金融損益+40%)
楽天グループカード・銀行・証券(フィンテック)、EC、モバイル銀行は追い風、有利子負債は逆風
SoFiローンの利ざや、手数料(約4割)調達・貸出とも金利に連動

損保の2社は、金利上昇の恩恵がはっきり数字に出ている。チャブの4〜6月期の純投資収益は前年比12%増で過去最高、MS&ADの金融損益は40%増えた。保険料を預かって運用する会社にとって、金利が上がるのは運用利回りが上がることを意味する。

表3:評価を並べる

会社PERPBRROE理論PBR実際÷理論配当利回り保有
SoFi35.9倍1.83倍5.9%0.74倍2.48なし
バークシャー23.5倍1.51倍6.6%0.83倍1.83なし
アメックス18.8倍6.4倍36.4%4.55倍1.411.23%
三菱UFJ16.3倍1.76倍11.3%1.41倍1.252.76%
JPモルガン16.9倍2.52倍17%2.13倍1.191.95%
オリックス11.9倍1.41倍10.4%1.30倍1.083.27%保有
MS&AD17.4倍1.16倍8.7%1.09倍1.073.31%保有
チャブ12.5倍1.81倍15.5%1.94倍0.931.08%
ジャックス15.4倍0.52倍5.6%0.70倍0.745.82%保有
楽天グループ―(赤字)1.41倍-18.5%――なし保有

※株価指標は2026年10月13日〜16日の各社の取得時点の値(日本株は東証、米国株は直近の米国市場の値)。 ※理論PBRはROE÷資本コスト8%。実際÷理論の大きい順に並べた。 ※PERはJPモルガン(2025年実績)・アメックス(直近12カ月実績)・バークシャー(営業利益ベース)・SoFi(2025年実績)・チャブ(実績)が実績、三菱UFJ・ジャックス・オリックス・MS&ADが予想。 ※ROEはJPモルガン・アメックスが会社開示、バークシャーは営業利益ベースの計算値(評価益を含めると11.7%、実際÷理論は1.03)、SoFiは4〜6月期の純利益を年換算して平均自己資本で割った計算値。その他はデータソースの実績値。 ※楽天グループのROEは2025年12月期の実績で赤字のため、理論PBRは出せない。

1を大きく超える3社は「この先」を買われている

上の3社は、今の稼ぐ力に比べて高い値段がついている。

SoFiの2.48は10社で最も大きい。4〜6月期の会員数は前年比35%増、売上は40%増で、会社は通期の調整後純利益を約8.25億ドルと見込んでいる。これを自己資本で割った予想ROEは約7.8%(概算)で、理論PBRは0.97倍、実際÷理論は1.89になる。それでもまだ大きい。市場は、成長がこの先も続き、ROEが上がっていくことを先に織り込んでいる。

ただし、SoFiの株価は2026年に入って大きく下げ、52週安値の水準にある。利下げ期待の後退や、3月に会計処理を疑問視する空売りレポートが出たこと(会社は反論)が重しになったと報じられている。下げてもなお、10社で一番高い上乗せが残っているということだ。

バークシャーの1.83は、木曜に書いたとおり、営業利益に出てこない保有株と現金の山を市場が評価している分だ。アメックスの1.41は、36%のROEが続くことへの信頼だ。

日本の金融株は「これから上がるROE」を先に織り込む

真ん中には、三菱UFJ(1.25)、JPモルガン(1.19)、オリックス(1.08)、MS&AD(1.07)が並ぶ。

火曜に書いたように、三菱UFJの上乗せはJPモルガンより大きい。ROEはJPモルガンの17%に対して11.3%と低いのに、理論値からの上乗せは日本の方が大きい。日銀の利上げが続き、日本の銀行の稼ぐ力が上がっていくことを、市場が先に織り込んでいる。

MS&ADも同じ形だ。ROEは8.7%で、10社の中では低い方にいる。それでも理論値に近い値段がつくのは、政策保有株の売却で資本を軽くし、ROEを上げていく計画があるからだ。

損保は、米国の方が安い

いちばん意外だったのは、損保のペアだ。

チャブMS&AD
ROE15.5%8.7%
PER12.5倍17.4倍
実際÷理論0.931.07

チャブはROEがMS&ADのほぼ2倍あるのに、PERは低く、理論値に対しては割り引かれている。稼ぐ力が強いのに、値段は安い。

バークシャーがチャブを買い増してきたのは、この位置にいるからだと読める。木曜に書いたとおり、バークシャーは「株価が本来の価値を下回っている」と判断したときに買う。表3で1を下回っているのは、チャブとジャックスの2社だけだ。

ジャックスの0.74も割り引かれているが、水曜に書いたとおり、今期の予想ROE(約3.3%)で計算し直すと上乗せに変わる。チャブは稼ぐ力に対して安く、ジャックスは今の利益に対してはむしろ高い。同じ「1を下回る」でも、中身は逆だ。

楽天グループは、赤字でもPBR1.41倍

楽天グループは2025年12月期のROEが-18.5%と赤字で、理論PBRは出せない。それでもPBRは1.41倍ついている。2026年4〜6月期には6年ぶりに最終黒字となり、フィンテック部門の利益は前年比60%増えた。市場は、モバイルの赤字の先にある、楽天銀行や楽天カードの稼ぐ力を見ていると読める。

保有している立場から

先週と今週で、保有している金融株を5銘柄扱った。表1と表2の位置で並べるとこうなる。

銘柄お金の集め方金利上昇は実際÷理論
MS&AD保険のフロート追い風1.07
楽天グループ楽天銀行の預金(10月からカードも)銀行は追い風、有利子負債は逆風―(赤字)
SBI新生銀行預金(金利で集める側)追い風、ただし預金コストも上がりやすい―
オリックス借入・社債が中心(銀行は売却)事業ごとに逆方向1.08
ジャックス借入・社債逆風0.74

保有銘柄のうち、表1の上の方にいるのはMS&ADだけだ。一番下にはジャックスがいる。先週の月曜に書いた、金利上昇の局面で自分の金融株が下落側に並んだことは、お金の集め方の並びと無関係ではなかった。

ただ、それだけで売る理由にはならない。配当株を売るのは、無配・減配や、配当株として見られなくなったときだ。この5銘柄で、その条件にすでに当たっているものはない。いちばん近いのはジャックスで、配当性向は89.5%、1株200円の下限が試される位置にいる。

逆に、表1でいちばん安心して持てる位置にいるのがMS&ADだ。保険のフロートは金利が上がってもコストが増えず、運用の利回りだけが上がる。今期の年間配当予想は170円で前期から10円増え、1,900億円の自社株買いも進んでいる。実際÷理論は1.07で、割高とは言えない。

今週わかったのは、金融株を「金利が上がれば上がる」の一本の線で見ると読み違えるということだ。お金をどこからいくらで集めているか、何を売っているか。その2つを見れば、同じ利上げが誰の追い風で、誰の逆風なのかが分かる。

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