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Week 10 — 金融
2026.10.06  ·  火曜 / SBI新生銀行(8303) 深掘り

SBI新生銀行——利上げ2回で純資産は2割増、株価は5%しか動かない

保有中(IPOで取得、公開価格比 約+5.5%/2026年10月6日時点)

この株は、2025年12月の再上場のときにIPOで手に入れた。買った理由は単純で、銀行株として持ちたかったからだ。日銀の利上げが続けば、銀行は利ざやが広がって稼ぎやすくなる。そう考えた。

実際、その後の10カ月で政策金利は0.75%から1.25%まで上がった。銀行株を持つ理由としては、これ以上ない展開だ。

それなのに株価は、公開価格の1,450円から約5%しか上がっていない。先週は-7.38%と、自分のポートフォリオの下落2位にも入った。

月曜に「金融株を金利が上がれば上がるという一本の線で見ると読み違える」と書いた。今日はその最初の実例として、追い風のはずの銀行がなぜ評価されないのかを確かめる。

どんな会社か

SBI新生銀行の前身は、1998年に経営破綻した日本長期信用銀行だ。2000年に新生銀行として再出発し、その後SBIグループの傘下に入った。2023年に一度上場廃止となり、2025年12月17日に東証プライムへ再上場している。

項目内容
再上場日2025年12月17日
公開価格1,450円
初値1,586円(公開価格比+9.38%)
公開価格ベースの時価総額約1兆2,985億円
主幹事野村證券、SBI証券

ここで押さえておきたいのは、この会社が純粋な銀行ではないという点だ。上場時に示された事業内容は「銀行とノンバンクの機能を併せ持つ総合金融サービス」。グループには、信販のアプラス、無担保ローンの「レイク」、昭和リースなどを抱えている。

月曜の記事で、金利上昇は銀行には追い風、ノンバンクには逆風、リースは事業ごとに逆方向だと整理した。SBI新生銀行は、その3つを一つの会社の中に持っている。 「銀行株」という看板で買うと、この中身が見えにくい。

業績:経常は4割増、純利益は1割減

2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)の数字を見る。

項目1Q実績前年同期比
経常収益2,267億円+25.4%
経常利益520億円+43.3%
純利益385億円-13.0%

経常利益は4割以上伸びている。本業はしっかり稼いでいる。ところが、最終的な純利益は13.0%の減益になった。会社は、税金の計算上の調整(税効果)の反動が理由だと説明している。

これは本業の悪化ではない。ただ、**決算の見出しで最初に目に入るのは「純利益13%減」**だ。利上げで銀行が儲かっているはずの局面で、減益の文字が並ぶ。株価の反応が鈍くなる理由の一つにはなる。

通期の予想も確認しておく。会社は税引前利益を1,320億円(前期比+8.1%)と見込んでいて、純利益の予想は開示していない。1Qの経常利益520億円は、この1,320億円の約4割にあたる。

3カ月で通期予想の4割に届いているので、計画はかなり保守的に見える。先々週の日本電子材料と同じく、会社の予想と足元のペースにずれがある会社だ。

貸出と有価証券が増えている

バランスシートの変化も見ておく。

項目金額前年度末比
貸出金11兆2,595億円+2.9%
有価証券4兆6,993億円+17.3%
現金預け金4兆6,664億円-2.5%
純資産1兆2,320億円ほぼ横ばい

貸出が増え、有価証券がさらに大きく増えている。金利が上がった局面で、債券などの有価証券を積み増した形だ。

月曜に書いた通り、銀行が持つ債券は金利が上がると値下がりする。今の金利で新しく買った債券は高い利回りを生む一方、この先さらに金利が上がれば評価損を抱えることになる。有価証券が3カ月で17%増えたということは、この先の金利の動きに対する賭けも大きくなったということでもある。

なお自己資本比率は5.0%と低く見えるが、これは銀行に共通する特徴だ。銀行は預金を負債として抱えるため、会計上の自己資本比率は一般の事業会社よりずっと低くなる。

株価を重くしているもの

業績は悪くない。それでも株価が上がらない理由として、もう一つ大きなものがある。流通株式比率の問題だ。

東証プライム市場には、上場を続けるための基準がある。その一つが、市場で実際に売買される株の割合(流通株式比率)を35%以上に保つことだ。SBI新生銀行はSBIグループが大株主として多くの株を持っているため、この基準への適合に向けた計画を開示し、6月には進捗状況も公表している。

基準を満たすには、市場に出回る株を増やす必要がある。方法はいくつかあるが、その一つは大株主が持ち株を市場に売り出すことだ。

投資家から見ると、これは将来の売り物が待っている状態になる。業績がよくても、いつか大きな売りが出るかもしれないという見通しがあれば、株価は上がりにくい。

先週の下落を振り返る

先週の土曜の記事では、SBI新生銀行の-7.38%について、半導体への資金移動と配当の権利落ちの2つを理由として挙げた。

ここで数字を確かめておく。SBI新生銀行の中間配当は1株10円で、今回が初めての中間配当だった。株価1,500円前後に対して、10円は約0.7%にすぎない。-7.38%のうち、権利落ちで説明できるのはごく一部だった。

残りの大部分は、半導体へ資金が集中する中で、金融株全体から資金が抜けた動きと見るべきだろう。先週の記事の説明は間違いではないが、権利落ちの比重を大きく見せすぎていた。

指標を確認する

2026年10月6日時点の数字。

項目数値
株価1,529.5円
時価総額約1.4兆円
PER11.1倍
PBR1.11倍
ROE(実績)10.4%
配当利回り2.75%(予想年間配当42円、うち中間10円)

月曜に書いた通り、今週は実績ROEをそのまま使って理論PBRを出す。

項目数値
実績ROE10.4%
理論PBR(ROE÷資本コスト8%)約1.30倍
実際のPBR1.11倍
実際÷理論約0.85

ROE10.4%は、資本コストの8%を上回っている。稼ぐ力に対して、株価は理論値より1割半ほど安い水準にある。

そして、再上場時と比べると変化がはっきりする。

項目再上場時(2025年12月)現在(2026年10月6日)変化
株価1,450円(公開価格)1,529.5円+5.5%
1株純資産1,151.40円(2025年3月期)1,379.93円+19.8%
PBR1.26倍1.11倍低下
PER11.95倍(当時の今期予想)11.1倍低下

1株純資産は約2割増えたのに、株価は5.5%しか上がっていない。 その結果、PBRもPERも再上場時より下がっている。

会社の中身は利上げとともに着実に育っている。株価がそれについてきていない。言い換えると、再上場時より今の方が割安になっている。

保有している立場から

銀行株として買った判断を、今日の数字で振り返る。

判断の中身は、正しく育っている。 利上げは2回あり、経常利益は前年比4割増え、1株純資産は2割増えた。銀行株として持つ理由は、この10カ月でむしろ強くなった。

値段が、まだついてきていない。 理由は今日見てきた通りだ。純利益の見出しが減益だったこと、流通株式比率の問題で将来の売り物が意識されていること、そして銀行だけでなくノンバンクやリースを抱えていて、金利上昇の恩恵が単純ではないこと。

継続保有する。理由は3つある。

1. 理論値より安い

実績ROE10.4%に対して、PBR1.11倍は理論値の約0.85倍。しかも再上場時より割安になっている。

2. 配当がある

予想年間配当42円は、公開価格1,450円に対して約2.9%になる。今回から中間配当も始まり、年2回受け取れるようになった。

3. 利上げはまだ続く

市場は12月までの追加利上げを9割以上の確率で織り込んでいる。銀行の利ざやが広がる流れは、まだ途中にある。

一方で、売却を考える条件も決めておく。

一つ目は、流通株式比率の対応で、大株主による大規模な売り出しが決まったとき。 売り出しそのものは一時的な需給の問題だが、その規模と価格次第では株価が大きく下押しされる。発表の内容を見て、持ち続けるか判断する。

二つ目は、ROEが資本コストの8%を下回ったとき。 利上げで稼げるはずの局面でROEが下がるなら、それは銀行としての稼ぐ力に問題があるということになる。

明日はジャックスを扱う。SBI新生銀行とは逆に、金利上昇で調達コストが上がる側のノンバンクだ。そして先週、自分のポートフォリオで最も大きく下げた銘柄でもある。

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