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Week 10 — 金融
2026.10.08  ·  木曜 / オリックス(8591) 深掘り

オリックス——金利が上がっても儲からない銀行を、3,700億円で手放した

保有中(含み益 +217.21%/2026年10月8日時点)

この株は配当目当てで持っている。含み益は+217.21%、株価は取得したときの約3.2倍になった。

月曜の記事で、オリックスを「一つの会社の中に、金利上昇の追い風と逆風が同居している会社」として紹介した。そして銀行、生命保険、不動産、投資事業を抱えていると書いた。

それは正確ではなかった。オリックスは今年、傘下の銀行を手放すことを決めている。 そしてその理由が、今週ずっと考えてきた問いへの答えになっていた。

月曜の記事の訂正

2026年4月27日、オリックスは傘下のオリックス銀行の全株式を、大和証券グループ本社の子会社である大和ネクスト銀行に譲渡すると発表した。

項目内容
譲渡先大和ネクスト銀行(大和証券グループ本社の子会社)
譲渡価額3,700億円
譲渡予定2026年10月まで
見込まれる売却益約1,242億円(2027年3月期に計上)
オリックス銀行の純資産2,502億円(2025年9月末)

オリックス銀行は1993年に設立された山一信託銀行を前身とし、1998年にオリックスグループに入った。四半世紀以上にわたってグループの中核の一つだった銀行を、手放すことになる。

月曜の記事では、このことを踏まえずにオリックスを「銀行を抱える会社」として紹介していた。月曜の記事にはすでに訂正を入れている。

なぜ、銀行を手放したのか

市場で指摘されている理由は、オリックス銀行は預金ベータが高く、金利上昇の恩恵が限られていたというものだ。

預金ベータとは、政策金利が上がったときに、預金金利がどれだけ追随して上がるかを示す数字だ。

月曜に、銀行は金利が上がると利ざやが広がると書いた。ただしそれは、貸出金利が上がる速さに対して、預金金利の上がり方が遅れる場合の話だ。もし預金金利も同じように上がってしまえば、利ざやは広がらない。

オリックス銀行は、店舗をほとんど持たず、比較的高い金利を示して定期預金を集めるタイプの銀行だった。こうした銀行は、金利が上がれば預金者を引き留めるために預金金利もすぐに上げる必要がある。つまり預金ベータが高い。政策金利が上がっても、貸出と預金の金利が一緒に上がるので、儲けは思ったほど増えない。

これは、今週の問いへのほぼ直接の答えになっている。

月曜には「金融株を『金利が上がれば上がる』という一本の線で見ると読み違える」と書いた。火曜には、金利上昇の追い風を受けるはずのSBI新生銀行の株価が、なかなか評価されないことを見た。オリックスは、その構造を内側から知っていた。銀行を持っていても、金利上昇で儲かるとは限らない。 だから、純資産2,502億円の銀行を3,700億円で売った。

市場の反応ははっきりしていた。売却発表の翌日、オリックス株は前日比+9.83%で引けている。

Week07の水素回で、米国の産業ガス大手エア・プロダクツが水素事業からの撤退を発表し、株価が12%上がった話を書いた。オリックスの銀行売却も、同じ形をしている。手放すと決めたことが、評価された。

オリックスは、何で稼いでいるのか

銀行を手放した後のオリックスは、何の会社なのか。

2027年3月期の第1四半期から、オリックスは報告セグメントを「APAC」「インフラ」「欧米」「保険」の4つに組み替えた。事業の中身で言えば、リース、融資、不動産、エネルギーなどのインフラ、生命保険、そして国内外の事業投資になる。

オリックスの稼ぎ方の特徴は、買って、育てて、売ることだ。銀行の売却だけでなく、2026年に入ってからも米国のプライベート・エクイティ投資先の売却を相次いで決めている。事業を持ち続けて利息で稼ぐのではなく、価値が上がったところで売り、得た資金を次の投資や株主還元に回す。

この稼ぎ方は、決算の数字にも出ている。

項目2027年3月期1Q前年同期比
営業収益8,766億円+17.4%
営業利益1,339億円+11.7%
税引前利益4,061億円+178.8%
純利益2,808億円+161.8%

営業利益は+11.7%と堅調だが、純利益は2.6倍に膨らんでいる。押し上げたのは持分法投資損益で、オリックスが関わる投資組合を通じて保有する東芝が、キオクシア株の売却・評価益を計上したことが大きい。

つまり今期のオリックスの利益には、一過性の大きな利益が2つ重なっている。キオクシア関連の利益と、10月までに計上される銀行の売却益約1,242億円だ。通期の純利益予想5,300億円を見るときは、この2つを頭に置いておく必要がある。

配当:前期の実績が下限になる仕組み

配当目当てで持っている以上、配当方針は一番大事な部分だ。

オリックスは、一過性の利益で配当が大きくぶれないように、配当方針を見直している。現在の方針は、変動の大きい評価損益を除いた「調整後の当期純利益」の39%か、前期の実績配当のいずれか高い方を配当とするものだ。

この方針のポイントは「前期の実績配当のいずれか高い方」という部分にある。利益が落ちても、前の年の配当は下回らない。前期の実績が、配当の下限になる。

実際の推移を見る。

決算期年間配当前期比
2025年3月期120.01円—
2026年3月期156.10円+30.1%
2027年3月期(予想)187.36円+20.0%

2年で配当は約1.6倍になった。今期の中間配当は107.27円の予想で、これは上期の調整後純利益が3,000億円になった場合の金額だ。

配当に加えて、自社株買いも続いている。2026年3月末に2,248万株だった自己株式は、6月末には2,884万株まで増えた。3カ月で約28%の増加になる。

昨日のジャックスと比べると、配当の性格の違いがよく分かる。ジャックスの年200円は、利益が大きく落ちる中で、純資産に紐づいたDOE3%と「1株200円以上」という約束で支えられていた。配当性向は約90%だった。オリックスは配当性向39%で、稼いだ利益の4割を配っても、なお配当が増えている。

金利は、今のオリックスにどう効くか

銀行を手放した後、オリックスにとって金利上昇はどう効くのか。

事業金利上昇の影響
生命保険追い風。保有する債券などの運用利回りが上がる
リース・融資逆風から中立。調達コストは上がるが、新しい契約で金利を転嫁できる
不動産逆風。金利が上がると不動産の評価額は下がりやすい
事業投資逆風。金利が上がると、投資先の企業価値の評価は下がりやすい

月曜に書いた「事業ごとに逆方向」という構図は変わっていない。ただし、追い風を受けるはずだった銀行がいなくなった。それでもオリックスは、銀行が金利上昇の恩恵を十分に受けられないことを理由に手放した。追い風だったはずの事業が、実は大した追い風ではなかったということになる。

先週の下落を振り返る

先週、オリックスは-6.90%下げた。今期の中間配当は1株107.27円の予想で、株価6,000円前後に対して約1.8%になる。-6.90%のうち、権利落ちで説明できるのは約4分の1だ。

今週扱った3社を並べると、こうなる。

銘柄先週の騰落率中間配当権利落ちで説明できる割合
SBI新生銀行-7.38%10円約0.7%(1割弱)
ジャックス-8.27%100円約2.7%(約3分の1)
オリックス-6.90%107.27円約1.8%(約4分の1)

3社とも、下落の大部分は権利落ちでは説明できない。先週の金融株の下げは、やはり半導体に資金が集中したことによる、金融株全体からの資金流出が主因だったと見るべきだろう。

指標を確認する

2026年10月8日時点の数字。

項目数値
株価5,751円
時価総額約6.5兆円
予想PER12.0倍
PBR1.41倍
ROE(実績)10.4%
配当利回り3.26%(予想年間配当187.36円)

理論PBRで見る。今期は一過性の利益が大きいので、3つの前提で比べる。

基準ROE理論PBR(÷資本コスト8%)実際÷理論
実績(2026年3月期)10.4%約1.30倍約1.08
会社予想(純利益5,300億円)約11.3%約1.41倍約1.00
会社予想から銀行売却益を除く約8.6%約1.08倍約1.31

※予想ROEは、会社予想の純利益を2026年6月末の株主資本約4.71兆円で割って算出。

前期の稼ぐ力や会社予想で見れば、PBR1.41倍はほぼ理論値どおりの水準にある。銀行の売却益を除いて見ると、理論値をやや上回る。

今週の3社の中で、オリックスは最も「適正に」評価されている会社だ。SBI新生銀行は理論値より安く、ジャックスは前期の数字で見れば安いが今期の数字で見れば高かった。オリックスは、どの見方をしても大きく外れていない。

保有している立場から

配当目当てで持ち続けてきた判断を、今日の数字で振り返る。

取得単価は約1,813円。予想配当187.36円で計算すると、**取得単価ベースの配当利回りは約10.3%**になる。配当目当てという目的に対しては、これ以上ない結果になっている。

なお、今からこの株を買う人にとっての利回りは、今日の株価5,751円に対する3.26%だ。10.3%は長く持ってきた自分にとっての数字であって、この株の利回りそのものではない。そこは読者のために書き添えておく。

配当株については、株価がどれだけ上がっても、それだけを理由に売ることはしない。売りを考えるのは、無配や減配になったとき、あるいは経営不振で配当株として見られなくなったときだ。値上がり益を取るために持っているわけではなく、配当を受け取り続けるために持っているからだ。

その基準で見ると、今のオリックスは持ち続ける理由がそろっている。

1. 配当が減らない仕組みがある

「前期の実績配当が下限」という方針があり、利益がぶれても配当は前年を下回らない。配当株として持つうえで、これ以上の安心材料はない。

2. 配当が増え続けている

配当性向39%を守りながら、2年で配当は約1.6倍になった。自社株買いも続いている。

3. 経営は不振どころか、資本の使い方が上手い

金利が上がっても儲からない銀行を、純資産の約1.5倍の値段で売った。手放すべき事業を見極め、高く売り、その資金を還元と次の投資に回す。この判断ができる経営陣だという点は、銀行売却で改めて確認できた。

逆に、見張っておくべき点も決めておく。

一つ目は、配当方針から「前期の実績配当が下限」という仕組みが外れたとき。 それは事実上の減配の可能性を開くことになり、配当株として持つ理由が薄れる。

二つ目は、銀行売却益のような一過性の利益を除いた実力ベースのROEが、資本コスト8%を継続的に下回ったとき。 上の表の通り、銀行売却益を除くとROEは約8.6%で、まだ資本コストを上回っている。ここが崩れれば、経営の資本効率そのものを見直す必要がある。

金曜は、ここまでの3社に保有しているMS&ADと楽天グループ、比較対象の三菱UFJフィナンシャル・グループなどを加えて横並びにする。

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