インデックスと、それから
← Week 10 金融
月解説火深掘り①水深掘り②木深掘り③金比較土自分株
Week 10 — 金融
2026.10.05  ·  月曜 / テーマ解説

金融——金利が上がれば金融株が上がる、はずだった

この3週間、土曜の自分株まとめで下落TOP3に入った銘柄を並べると、一つの共通点が浮かび上がる。

週下落TOP3に入った金融・金利関連の銘柄
Week07KDX不動産投資法人
Week08楽天グループ、MS&ADインシュアランスグループHD
Week09ジャックス、SBI新生銀行、オリックス

3週続けて、金融や金利に関わる銘柄が下落側に並んでいる。しかも、そのすべてが自分の保有銘柄だ。

今週のテーマは金融。これまでのように新しい分野を外から見るのではなく、下がり続けている自分の持ち株を、正面から点検する週にする。

金利は、どこまで来たのか

まず、この2年半で日本の金利がどう動いたかを確認する。

時期政策金利出来事
2024年3月0〜0.1%マイナス金利を解除
2024年7月0.25%追加利上げ
2025年1月0.50%追加利上げ
2025年12月0.75%追加利上げ
2026年6月1.00%1995年以来、約31年ぶりの水準
2026年9月1.25%6月から3カ月で再び利上げ

2年半前まで、日本の政策金利はマイナスだった。それが今は1.25%にある。長期金利(10年国債利回り)も9月25日に一時3.115%をつけ、約30年ぶりの高水準になった。

利上げはまだ終わっていない。市場では、日銀が12月までに追加利上げに踏み切る確率が9割を超え、10月の連続利上げも3割近くまで織り込まれている。

「金利のある世界」は、もう仮定の話ではなくなった。

金利が上がると、誰が得をして誰が損をするのか

金利の上昇は、経済全体にとって一方向の材料ではない。得をする側と損をする側が、はっきり分かれる。

みずほ総合研究所の試算では、政策金利が1.5%まで上がった場合、家計全体では預金の利息や配当の増加が住宅ローンの利払い増を上回り、年間6.3兆円のプラスになる。一方で企業全体では、2028年度までの金利上昇で経常利益が累計2.2%(約2.6兆円)押し下げられ、特に借入への依存度が高い中小企業の負担が大きいとしている。

お金を持っている側は得をし、お金を借りている側は損をする。 金利上昇の基本的な構図はこれだけだ。

金融機関も、この構図の中にいる。ただし金融機関は「お金を集めて、貸す」ことが本業なので、どこからお金を集め、どう貸しているかで、金利上昇が追い風になるか逆風になるかが変わる。

業態によって、金利の意味はまったく違う

今週扱う3社は、同じ「金融」でも業態が違う。金利上昇に対する立場も違う。

業態主な会社お金の集め方お金の使い方金利上昇は
銀行SBI新生銀行預金企業・個人への貸出、債券投資基本的に追い風
ノンバンクジャックス銀行からの借入、社債クレジット、オートローン基本的に逆風
リース・多角化オリックス借入、社債リース、不動産、保険、投資など事業ごとに逆方向

銀行:利ざやが広がる側

銀行は預金を集め、それを貸し出して、その金利差(利ざや)で稼ぐ。金利が上がると、貸出金利は比較的早く上がる一方、預金金利の引き上げは遅れがちになる。その差だけ利ざやが広がる。

実際、2026年3月期は地方銀行を中心に最高益が相次いだ。四国の地方銀行8行のうち6行が最高益を更新し、8行合算の純利益は前の期から37%増えている。

ただし、追い風だけではない。預金の獲得競争が激しくなれば、預金金利を引き上げざるを得ず、利ざやの拡大は思ったほど残らない。 また、銀行は大量の債券を持っている。金利が上がれば債券の価格は下がり、評価損が膨らむ。利上げが利益を押し上げる一方で、バランスシートの別の場所に損が溜まっていく構造だ。

ノンバンク:調達コストが上がる側

ノンバンクは預金を集められない。そのため、銀行からの借入や社債の発行でお金を調達し、それをクレジットやオートローンとして貸し出している。

金利が上がると、まず調達コストが上がる。一方で貸し出す側の金利はすぐには上げられない。既存の契約は金利が固定されていることが多く、新しい契約の金利を上げようにも、法律で決められた上限金利がある。調達コストだけが先に上がり、利ざやは縮みやすい。

銀行とは、金利上昇に対する立場がほぼ正反対になる。

リース・多角化:事業ごとに逆方向

リースは、企業が使う設備を代わりに買って貸し出し、毎月リース料を受け取る商売だ。リース料は契約時に固定されることが多いので、金利が上がると既存の契約の利ざやは縮み、新しい契約で金利上昇分を転嫁していくことになる。

オリックスはここに加えて、生命保険、不動産、投資事業など、多くの事業を抱えている。保険は金利上昇の追い風を受け、リースや借入の多い事業は逆風を受ける。一つの会社の中で、金利の影響が逆方向に打ち消し合う構造になっている。

※初出時、オリックスが銀行を抱えていると記載していたが、傘下のオリックス銀行は2026年4月に大和証券グループへの売却が発表されている。木曜の記事で詳しく扱う。

それでも、追い風のはずの銘柄まで下がった

ここで、冒頭の表をもう一度見る。今度は金利上昇に対する立場で分け直す。

銘柄業態金利上昇は本来…この3週間
KDX不動産投資法人不動産投資法人逆風(借入が多く、利回りで比べられる)下落
楽天グループネット・金融逆風(有利子負債が大きい)下落
ジャックスノンバンク逆風(調達コストが上がる)下落
オリックスリース・多角化中立(事業ごとに逆方向)下落
SBI新生銀行銀行追い風(利ざやが広がる)下落
MS&ADインシュアランスグループHD損害保険追い風(運用利回りが上がる)下落

逆風を受ける側が下がるのは分かる。問題は下の2つだ。金利上昇の恩恵を受けるはずの銀行と保険まで、下落側に並んでいる。

理由はいくつか考えられる。先週書いた通り、半導体に資金が集中して金融株全体から資金が抜けた週もあった。9月末の中間配当の権利落ちもあった。銀行や保険の株価は、金利上昇への期待ですでに上がっていた分、利上げが現実になると「材料出尽くし」で売られることもある。

いずれにしても、はっきりしたことが一つある。金融株を「金利が上がれば上がる」という一本の線で見ると、読み違える。 今週はその読み違いの中身を、一社ずつ確かめていく。

評価指標の考え方

金融株を評価するとき、他の業種と違う点が3つある。

1. PBRとROEが基本になる

銀行にとって、自己資本は商品の原料にあたる。自己資本の大きさで貸し出せる量が決まるので、「自己資本をどれだけ効率よく使って稼いだか」を示すROEと、「自己資本に対して市場がいくらの値段をつけているか」を示すPBRが、評価の中心になる。

先週の金曜の記事で、PBR÷PERでROEを逆算して理論PBRを出す方法は、実質的にPERを見ているのと同じだったと書いた。今週は、データソースが公表している実績ROEや会社予想のROEをそのまま使う。 こうすれば循環しない形で理論PBRを出せる。金融株はもともとROEとPBRで見る業種なので、ちょうどいい回になる。

2. 配当と株主還元

金融株は配当利回りの高い銘柄が多い。配当利回りだけでなく、配当と自社株買いを合わせた総還元性向も見る。先週の権利落ちのように、配当の基準日前後で株価が動くことも頭に入れておく。

3. 業態ごとの固有の数字

同じ「金利上昇」でも、どの数字に効くかは業態によって違う。それぞれの記事で、その会社にとって一番効く数字を確認する。

今週登場する3社

曜日銘柄コード業態金利上昇はスタンス
火SBI新生銀行8303銀行追い風保有中
水ジャックス8584ノンバンク逆風保有中
木オリックス8591リース・多角化事業ごとに逆方向保有中

各銘柄の指標は、それぞれの個別記事で最新の数字を確認する。

今週は、火曜から木曜の3社がすべて保有銘柄になる。これまでの週では、保有している銘柄と保有していない銘柄を並べて比べてきた。今週は、自分がなぜこれらの金融株を持っているのかを、金利という一つの変数から問い直すことになる。

火曜のSBI新生銀行は、再上場してから初めての中間配当を9月末に迎えた銀行だ。金利上昇の追い風を受けるはずの業態で、なぜ株価が下がったのかを見る。

水曜のジャックスは、銀行とは逆に、金利上昇で調達コストが上がる側にいる。3週間の下落銘柄の中で最も下げ幅が大きかった銘柄でもある。

木曜のオリックスは、一つの会社の中に追い風と逆風が同居している。金利上昇が全体としてプラスなのかマイナスなのかを、事業の内訳から確かめる。

金曜は、ここに保有しているMS&ADと楽天グループ、そして比較対象として三菱UFJフィナンシャル・グループなどを加えて横並びにする予定だ。

本ブログは個人の投資記録・考察であり、投資助言ではありません。掲載情報の正確性は最善の注意を払っていますが保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。