金融——金利が上がれば金融株が上がる、はずだった
この3週間、土曜の自分株まとめで下落TOP3に入った銘柄を並べると、一つの共通点が浮かび上がる。
| 週 | 下落TOP3に入った金融・金利関連の銘柄 |
|---|---|
| Week07 | KDX不動産投資法人 |
| Week08 | 楽天グループ、MS&ADインシュアランスグループHD |
| Week09 | ジャックス、SBI新生銀行、オリックス |
3週続けて、金融や金利に関わる銘柄が下落側に並んでいる。しかも、そのすべてが自分の保有銘柄だ。
今週のテーマは金融。これまでのように新しい分野を外から見るのではなく、下がり続けている自分の持ち株を、正面から点検する週にする。
金利は、どこまで来たのか
まず、この2年半で日本の金利がどう動いたかを確認する。
| 時期 | 政策金利 | 出来事 |
|---|---|---|
| 2024年3月 | 0〜0.1% | マイナス金利を解除 |
| 2024年7月 | 0.25% | 追加利上げ |
| 2025年1月 | 0.50% | 追加利上げ |
| 2025年12月 | 0.75% | 追加利上げ |
| 2026年6月 | 1.00% | 1995年以来、約31年ぶりの水準 |
| 2026年9月 | 1.25% | 6月から3カ月で再び利上げ |
2年半前まで、日本の政策金利はマイナスだった。それが今は1.25%にある。長期金利(10年国債利回り)も9月25日に一時3.115%をつけ、約30年ぶりの高水準になった。
利上げはまだ終わっていない。市場では、日銀が12月までに追加利上げに踏み切る確率が9割を超え、10月の連続利上げも3割近くまで織り込まれている。
「金利のある世界」は、もう仮定の話ではなくなった。
金利が上がると、誰が得をして誰が損をするのか
金利の上昇は、経済全体にとって一方向の材料ではない。得をする側と損をする側が、はっきり分かれる。
みずほ総合研究所の試算では、政策金利が1.5%まで上がった場合、家計全体では預金の利息や配当の増加が住宅ローンの利払い増を上回り、年間6.3兆円のプラスになる。一方で企業全体では、2028年度までの金利上昇で経常利益が累計2.2%(約2.6兆円)押し下げられ、特に借入への依存度が高い中小企業の負担が大きいとしている。
お金を持っている側は得をし、お金を借りている側は損をする。 金利上昇の基本的な構図はこれだけだ。
金融機関も、この構図の中にいる。ただし金融機関は「お金を集めて、貸す」ことが本業なので、どこからお金を集め、どう貸しているかで、金利上昇が追い風になるか逆風になるかが変わる。
業態によって、金利の意味はまったく違う
今週扱う3社は、同じ「金融」でも業態が違う。金利上昇に対する立場も違う。
| 業態 | 主な会社 | お金の集め方 | お金の使い方 | 金利上昇は |
|---|---|---|---|---|
| 銀行 | SBI新生銀行 | 預金 | 企業・個人への貸出、債券投資 | 基本的に追い風 |
| ノンバンク | ジャックス | 銀行からの借入、社債 | クレジット、オートローン | 基本的に逆風 |
| リース・多角化 | オリックス | 借入、社債 | リース、不動産、保険、投資など | 事業ごとに逆方向 |
銀行:利ざやが広がる側
銀行は預金を集め、それを貸し出して、その金利差(利ざや)で稼ぐ。金利が上がると、貸出金利は比較的早く上がる一方、預金金利の引き上げは遅れがちになる。その差だけ利ざやが広がる。
実際、2026年3月期は地方銀行を中心に最高益が相次いだ。四国の地方銀行8行のうち6行が最高益を更新し、8行合算の純利益は前の期から37%増えている。
ただし、追い風だけではない。預金の獲得競争が激しくなれば、預金金利を引き上げざるを得ず、利ざやの拡大は思ったほど残らない。 また、銀行は大量の債券を持っている。金利が上がれば債券の価格は下がり、評価損が膨らむ。利上げが利益を押し上げる一方で、バランスシートの別の場所に損が溜まっていく構造だ。
ノンバンク:調達コストが上がる側
ノンバンクは預金を集められない。そのため、銀行からの借入や社債の発行でお金を調達し、それをクレジットやオートローンとして貸し出している。
金利が上がると、まず調達コストが上がる。一方で貸し出す側の金利はすぐには上げられない。既存の契約は金利が固定されていることが多く、新しい契約の金利を上げようにも、法律で決められた上限金利がある。調達コストだけが先に上がり、利ざやは縮みやすい。
銀行とは、金利上昇に対する立場がほぼ正反対になる。
リース・多角化:事業ごとに逆方向
リースは、企業が使う設備を代わりに買って貸し出し、毎月リース料を受け取る商売だ。リース料は契約時に固定されることが多いので、金利が上がると既存の契約の利ざやは縮み、新しい契約で金利上昇分を転嫁していくことになる。
オリックスはここに加えて、生命保険、不動産、投資事業など、多くの事業を抱えている。保険は金利上昇の追い風を受け、リースや借入の多い事業は逆風を受ける。一つの会社の中で、金利の影響が逆方向に打ち消し合う構造になっている。
※初出時、オリックスが銀行を抱えていると記載していたが、傘下のオリックス銀行は2026年4月に大和証券グループへの売却が発表されている。木曜の記事で詳しく扱う。
それでも、追い風のはずの銘柄まで下がった
ここで、冒頭の表をもう一度見る。今度は金利上昇に対する立場で分け直す。
| 銘柄 | 業態 | 金利上昇は本来… | この3週間 |
|---|---|---|---|
| KDX不動産投資法人 | 不動産投資法人 | 逆風(借入が多く、利回りで比べられる) | 下落 |
| 楽天グループ | ネット・金融 | 逆風(有利子負債が大きい) | 下落 |
| ジャックス | ノンバンク | 逆風(調達コストが上がる) | 下落 |
| オリックス | リース・多角化 | 中立(事業ごとに逆方向) | 下落 |
| SBI新生銀行 | 銀行 | 追い風(利ざやが広がる) | 下落 |
| MS&ADインシュアランスグループHD | 損害保険 | 追い風(運用利回りが上がる) | 下落 |
逆風を受ける側が下がるのは分かる。問題は下の2つだ。金利上昇の恩恵を受けるはずの銀行と保険まで、下落側に並んでいる。
理由はいくつか考えられる。先週書いた通り、半導体に資金が集中して金融株全体から資金が抜けた週もあった。9月末の中間配当の権利落ちもあった。銀行や保険の株価は、金利上昇への期待ですでに上がっていた分、利上げが現実になると「材料出尽くし」で売られることもある。
いずれにしても、はっきりしたことが一つある。金融株を「金利が上がれば上がる」という一本の線で見ると、読み違える。 今週はその読み違いの中身を、一社ずつ確かめていく。
評価指標の考え方
金融株を評価するとき、他の業種と違う点が3つある。
1. PBRとROEが基本になる
銀行にとって、自己資本は商品の原料にあたる。自己資本の大きさで貸し出せる量が決まるので、「自己資本をどれだけ効率よく使って稼いだか」を示すROEと、「自己資本に対して市場がいくらの値段をつけているか」を示すPBRが、評価の中心になる。
先週の金曜の記事で、PBR÷PERでROEを逆算して理論PBRを出す方法は、実質的にPERを見ているのと同じだったと書いた。今週は、データソースが公表している実績ROEや会社予想のROEをそのまま使う。 こうすれば循環しない形で理論PBRを出せる。金融株はもともとROEとPBRで見る業種なので、ちょうどいい回になる。
2. 配当と株主還元
金融株は配当利回りの高い銘柄が多い。配当利回りだけでなく、配当と自社株買いを合わせた総還元性向も見る。先週の権利落ちのように、配当の基準日前後で株価が動くことも頭に入れておく。
3. 業態ごとの固有の数字
- 銀行:預貸利ざや(貸出金利と預金金利の差)、与信費用(貸し倒れへの備え)、保有債券の評価損
- ノンバンク:調達コスト(借入や社債の金利)、貸倒率
- リース:資産の利回りと調達コストの差、事業ごとの利益の内訳
同じ「金利上昇」でも、どの数字に効くかは業態によって違う。それぞれの記事で、その会社にとって一番効く数字を確認する。
今週登場する3社
| 曜日 | 銘柄 | コード | 業態 | 金利上昇は | スタンス |
|---|---|---|---|---|---|
| 火 | SBI新生銀行 | 8303 | 銀行 | 追い風 | 保有中 |
| 水 | ジャックス | 8584 | ノンバンク | 逆風 | 保有中 |
| 木 | オリックス | 8591 | リース・多角化 | 事業ごとに逆方向 | 保有中 |
各銘柄の指標は、それぞれの個別記事で最新の数字を確認する。
今週は、火曜から木曜の3社がすべて保有銘柄になる。これまでの週では、保有している銘柄と保有していない銘柄を並べて比べてきた。今週は、自分がなぜこれらの金融株を持っているのかを、金利という一つの変数から問い直すことになる。
火曜のSBI新生銀行は、再上場してから初めての中間配当を9月末に迎えた銀行だ。金利上昇の追い風を受けるはずの業態で、なぜ株価が下がったのかを見る。
水曜のジャックスは、銀行とは逆に、金利上昇で調達コストが上がる側にいる。3週間の下落銘柄の中で最も下げ幅が大きかった銘柄でもある。
木曜のオリックスは、一つの会社の中に追い風と逆風が同居している。金利上昇が全体としてプラスなのかマイナスなのかを、事業の内訳から確かめる。
金曜は、ここに保有しているMS&ADと楽天グループ、そして比較対象として三菱UFJフィナンシャル・グループなどを加えて横並びにする予定だ。
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