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Week 10 — 金融
2026.10.09  ·  金曜 / 金融7社比較

金融7社比較——市場は「銀行かどうか」ではなく「金利で儲かる仕組み」を見ていた

月曜に、今週の問いを立てた。金融株を「金利が上がれば上がる」という一本の線で見ると、読み違えるのではないか。

火曜から木曜まで、保有しているSBI新生銀行、ジャックス、オリックスを見てきた。今日はそこに、同じく保有しているMS&ADと楽天グループ、そして比較対象として三菱UFJフィナンシャル・グループと大和証券グループ本社を加えて、7社を横並びにする。

先に結論を書いておく。市場は「銀行かどうか」ではなく、「金利上昇で本当に儲かる仕組みを持っているか」で金融株を選別していた。

まず数字を並べる

銘柄コード業態株価時価総額PERPBRROE(実績)配当利回り
三菱UFJフィナンシャル・グループ8306メガバンク3,462円41.1兆円16.2倍1.76倍11.3%2.77%
MS&ADインシュアランスグループHD8725損害保険4,895円7.3兆円16.6倍1.11倍8.7%3.47%
オリックス8591リース・多角化5,751円6.5兆円12.0倍1.41倍10.4%3.26%
大和証券グループ本社8601証券(銀行を買収中)1,736円2.7兆円13.8倍1.36倍10.3%2.53%
SBI新生銀行8303銀行1,529.5円1.4兆円11.1倍1.11倍10.4%2.75%
楽天グループ4755ネット・金融659.6円1.4兆円—1.44倍-18.5%0.00%
ジャックス8584ノンバンク3,430円1,545.6億円15.4倍0.52倍5.6%5.83%

※SBI新生銀行は2026年10月6日、ジャックスは7日、オリックスは8日、その他4社は9日時点の数値。

最大の三菱UFJと最小のジャックスでは、時価総額に約270倍の差がある。そしてこの2社は無関係ではない。水曜に書いた通り、三菱UFJ銀行はジャックスの議決権の約4割を持つ筆頭株主だ。

理論PBRで並べ直す

月曜に書いた通り、今週は実績ROEをそのまま使って理論PBRを出している。PBR÷PERからROEを逆算する方法と違い、循環しない比較になる。

銘柄ROE(実績)理論PBR(÷資本コスト8%)実際のPBR実際÷理論
ジャックス5.6%0.70倍0.52倍0.74
SBI新生銀行10.4%1.30倍1.11倍0.85
MS&AD8.7%1.09倍1.11倍1.02
大和証券グループ本社10.3%1.29倍1.36倍1.06
オリックス10.4%1.30倍1.41倍1.08
三菱UFJ11.3%1.41倍1.76倍1.25

楽天グループは最終赤字でROEがマイナスのため、この計算には入れていない。

7社のうち5社は、理論値の0.85〜1.08倍の範囲に収まっている。大きく外れているのは、下のジャックスと、上の三菱UFJの2社だ。

ジャックスが安い理由は水曜に見た。前期の稼ぐ力で見れば理論値の0.74倍だが、今期の会社予想(ROE約3.3%)で見れば1.24倍になる。安さは、今期の利益の落ち込みでほぼ説明がつく。

注目すべきは、もう一方の端だ。

最も高く評価されているのは、三菱UFJ

同じ「銀行」でも、SBI新生銀行は理論値の0.85倍、三菱UFJは1.25倍。ROEは10.4%と11.3%でそれほど変わらないのに、市場がつけている値段には大きな差がある。

この差を説明するのが、木曜に書いた預金ベータだ。

政策金利が上がったとき、預金金利がどれだけ追随して上がるか。オリックスが銀行を手放した理由は、オリックス銀行の預金ベータが高く、金利が上がっても利ざやが広がりにくかったことだった。

メガバンクは逆の立場にいる。給与の振込口座や、企業が日々の支払いに使う決済用の口座に、大量の預金を抱えている。こうした預金は、金利が少し上がったからといってすぐに他へ移ることはない。だから銀行は、預金金利を急いで上げる必要がない。貸出金利が上がる一方で、預金金利はゆっくりしか上がらない。その差が、利ざやとして残る。

三菱UFJの2026年3月期の純利益は2兆円を超えた。市場が理論値の1.25倍という値段をつけているのは、この稼ぐ仕組みが金利上昇の局面でさらに効いてくると見ているからだろう。

一方で、比較的高い金利を示して預金を集める比重が大きい銀行ほど、預金ベータは高くなりやすい。火曜にSBI新生銀行の株価が評価されない理由として、純利益の見出しや流通株式比率の問題を挙げた。預金の性格の違いも、評価の差に関係している可能性がある。

銀行であることと、金利上昇で儲かることは、同じではない。 今週の問いへの答えは、ここにあった。

銀行を売った会社と、買った会社

今週の比較には、もう一つの対比がある。オリックス銀行を売ったオリックスと、買った大和証券グループ本社だ。

オリックス大和証券グループ本社
立場売り手買い手
判断の理由預金ベータが高く、金利上昇の恩恵が限られる融資や信託の機能を補い、個人向け部門を強化する
発表後の株価翌日+9.83%発表直後は下落と伝えられる
実際÷理論PBR1.081.06

同じ3,700億円の取引で、売った側は評価され、買った側は売られた。

ただし、大和証券グループ本社が間違った判断をしたと決めつけることはできない。大和にとって銀行は、それ単体で利ざやを稼ぐ事業ではなく、証券の顧客に融資や信託のサービスを提供し、預金と運用をつなぐための機能だ。傘下の大和ネクスト銀行と合わせて総資産9兆円超の銀行になり、5年間で預金を2兆円以上増やすことを目指している。

オリックスにとっては手放すべき銀行が、大和にとっては手に入れるべき銀行だった。同じ資産でも、誰が持つかで価値は変わる。 現時点で理論PBRはほぼ同じ水準にあり、市場はどちらの判断が正しかったかを、まだ決めていない。

金利の逆風を受ける側

逆風を受ける側の2社も確認しておく。

ジャックスは、水曜に見た通り、調達金利の上昇で今期の経常利益が前期比45.7%減となる見通しだ。月曜に整理した「ノンバンクは調達コストが上がる側」という構図が、最もはっきり数字に出ている会社だった。それでも年200円の配当は、DOE3%と「1株200円以上」という約束で守られている。

楽天グループは、最終赤字が続き、配当はない。楽天銀行や楽天カード、楽天証券といった金融事業を抱えているが、グループ全体では赤字だ。株価は9月25日につけた年初来安値682円10銭を、さらに下回っている。月曜に「逆風」側に置いた理由は、有利子負債の大きさだった。金融事業が金利上昇の恩恵を受けても、グループ全体の借入にかかる金利の負担がそれを上回る構図になっている。

追い風のはずだった保険

MS&ADは、月曜に「追い風」側に置いた会社だった。保険会社は、保有する債券の運用利回りが上がるため、一般に金利上昇が追い風になる。

理論PBRで見ると、実際÷理論は1.02で、ほぼ理論値どおりの水準にある。割安でも割高でもない。

ただし株価は、9月18日につけた10年来の高値5,326円から、今日の4,895円まで約8%下がっている。金利上昇の追い風を受けるはずの業種で、利上げが進む中で株価が下がったことになる。Week08の土曜に書いた通り、10年来の高値まで上がった後の反動という面が大きいと見ている。追い風は、高値をつけるまでの株価にすでに織り込まれていたということだ。

5つの立場に分類する

今週の7社を、金利上昇に対する立場で分けるとこうなる。

立場該当実際÷理論市場の評価
金利で確実に儲かる銀行三菱UFJ1.25最も高く評価
金利の恩恵が限られる銀行SBI新生銀行0.85理論値より安い
銀行を入れ替える会社オリックス(売り手)、大和証券グループ本社(買い手)1.08、1.06ほぼ理論値どおり
追い風を株価が織り込み済みの保険MS&AD1.02ほぼ理論値どおり
金利の逆風を受ける側ジャックス、楽天グループ0.74、算出不能安いか、評価のしようがない

月曜の時点では、金融株を「追い風」「逆風」「中立」の3つに分けていた。実際に数字を並べると、追い風を受けるはずの銀行の中で、評価がはっきり二つに割れていた。 そしてその分かれ目は、預金の性格だった。

自分の保有株から見て

今週扱った7社のうち、5社を保有している。

SBI新生銀行は、銀行株として買った。1株純資産は再上場から約2割増え、理論値の0.85倍まで割安になっている。今日の比較で、同じ銀行でも三菱UFJとの間に評価の差があることがはっきりした。この差がどこまで縮まるかを、利上げの進み方と合わせて見ていく。

ジャックスは、配当狙いで持っている。利益は大きく落ちるが、年200円の配当は約束で守られている。配当株として見られなくなるかどうかは、配当方針が変わるかどうかで判断する。

オリックスは、配当目当てで持っている。前期の実績配当が下限になる仕組みがあり、配当は2年で約1.6倍になった。銀行を手放した判断は、今週の問いへの一番明快な答えだった。

MS&ADと楽天グループは、今週は比較対象として見るにとどめた。MS&ADは理論値どおりで、10年来の高値からの調整局面にある。楽天グループは最終赤字が続いており、金利上昇がグループ全体の負担として効いている。

そして、保有していない三菱UFJは、今週の7社の中で最も高く評価されている。金利上昇で儲かる仕組みを最も確実に持っているのが、メガバンクだった。ジャックスの筆頭株主でもあるこの会社が、保有している金融株の中でいちばん欠けているピースかもしれない。

明日は今週の自分株まとめとして、ポートフォリオの損益と週間騰落を確認する。

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