インデックスと、それから
← Week 09 半導体検査
月解説火深掘り①水深掘り②木深掘り③金比較土自分株
Week 09 — 半導体検査
2026.09.30  ·  水曜 / フォームファクター(FORM) 深掘り

フォームファクター——売上は日本電子材料の4倍、時価総額は15倍

保有中

先週の土曜の自分株まとめで、上昇1位だった銘柄だ。昨日の日本電子材料と同じく、半導体の検査に使うプローブカードを作っている。

同じ製品を作る2社を並べると、一つの事実が目に入る。フォームファクターの売上は日本電子材料の約4倍、時価総額は約15倍。 同じ商売をしているのに、市場がつけている値段の水準がまったく違う。

今日はこの差が何から来ているのかを見ていく。

どんな会社か

フォームファクターは米カリフォルニア州リバモアに本社を置く、プローブカードの世界大手だ。ナスダックに上場している。

事業は2つに分かれる。

セグメント内容
プローブカードウエハ上のチップを検査するための接点部品。売上の大半を占める
システム研究開発や技術開発向けの測定装置(プローバなど)

プローブカードの中でも、用途は大きく2つに分かれる。

ここが昨日の日本電子材料との最初の違いになる。日本電子材料の成長はほぼメモリー向けから来ていて、非メモリー向けは軟調だった。フォームファクターは、メモリーとロジックの両方で伸びている。

直近の四半期では、世界最大のファウンドリが売上の10%を超える顧客になっている。台湾向けの売上は前四半期比で30%以上伸びた。

業績:4四半期で売上3割増、利益は3倍

直近の四半期決算を並べる。

四半期売上高前年同期比非GAAP1株利益
2025年4Q2.152億ドル+13.6%—
2026年1Q2.261億ドル+32.0%0.56ドル
2026年2Q2.582億ドル+31.9%0.82ドル
2026年3Q(会社見通し)2.70億ドル(±0.10億ドル)—0.86ドル(±0.09ドル)

2025年通期の売上高は7.85億ドルで過去最高だった。そこから2四半期連続で過去最高を更新している。

2Qの非GAAP1株利益0.82ドルは、アナリスト予想の0.61ドルを大きく上回り、前年同期の3倍を超えた。粗利率(GAAP)は前年同期の37.3%から**50.7%**へ、13ポイント以上改善している。

CEOのマイク・スレッサー氏は、過去4四半期で売上を30%以上伸ばし、非GAAP粗利率を15ポイント改善し、1株利益を3倍にしたと述べている。

需要の入口が多い

フォームファクターの強さは、成長の入口が複数あることだ。

1. HBM4 2QのDRAM向け売上は8,500万ドルで、前年同期比48.9%増えた。そのうち約3分の2がHBM向けだ。2社の顧客がHBM4の高速検査向けに、同社の「SmartMatrix」というウエハ全面を一度に接触させる技術を採用している。

2. データセンター向けCPUとカスタムASIC ファウンドリ・ロジック向けでは、データセンター向けCPUの検査用カードが成長を牽引した。ネットワーク用チップも堅調で、ハイパースケーラー(大手クラウド企業)が独自に設計するカスタムASIC向けも立ち上がり始めている。

3. 光電融合(CPO) チップと光通信部品を一つのパッケージにまとめるCo-Packaged Optics向けの検査装置も伸びている。会社は3Q末までにCPO向けの累計売上が2,000万ドルを超えると見込んでいる。Week02で扱った光通信のテーマが、検査の側でもつながってきた。

日本電子材料はメモリー向けという一本の太い柱で伸びている。フォームファクターは複数の柱を持っている。1本の柱が細っても、ほかの柱で支えられるという構造の違いが、評価の差の一つの理由になっている。

2030年目標を数字で示している

もう一つの違いは、将来の見せ方だ。

フォームファクターは、2030年に売上高16億ドル、非GAAP粗利率55%、非GAAP1株利益5ドルという長期目標を掲げている。2025年の売上7.85億ドルから見れば、5年で約2倍にする計画だ。

昨日見た通り、日本電子材料は1年先の計画すら保守的に出し、実績で上振れさせてきた会社だった。長期目標を数字で示していない。

投資家から見ると、この差は大きい。長期の数字が示されていれば、市場はその軌道に沿って値段をつけられる。 示されていなければ、市場は目先の計画を基準にするしかない。

指標を確認する

2026年9月29日時点の数字。

項目数値
株価約136.25ドル
時価総額約106.4億ドル
PER(2025年通期の実績)194.64倍
PBR(2025年12月末の実績)10.22倍
1株利益(2025年通期、GAAP)0.70ドル
1株純資産(2025年12月末)13.33ドル
52週高値160.27ドル(2026年6月30日)
52週安値35.67ドル(2025年9月30日)

PER194.64倍という数字は、そのまま受け取ると判断を誤る。これは2025年通期のGAAPベースの1株利益0.70ドルで計算したもので、その後の急激な利益改善を反映していない。

直近のペースで計算し直すとこうなる。

前提年間1株利益PER
2025年通期実績(GAAP)0.70ドル約195倍
2Q実績と3Q見通しの平均を年率換算(非GAAP)約3.36ドル約40倍
2030年の会社目標(非GAAP)5.00ドル約27倍

※非GAAP利益は株式報酬費用などを除いた会社独自の基準で、GAAP利益より高く出る。

直近のペースで見ればPERは約40倍。そして会社が4年後に達成を目指す目標の利益で計算しても、今の株価はPER約27倍になる。

言い換えると、市場はすでに2030年目標の相当部分を今の株価に織り込んでいる。目標を達成しても、それだけでは株価が大きく上がる理由にはならない。目標を上回るか、目標への到達が早まる必要がある。

株価の動きもそれを示している。52週安値の35.67ドルから、現在の約136ドルまで1年で約3.8倍になった。6月末につけた52週高値の160.27ドルからは約15%下にいる。

日本電子材料と並べる

ここで昨日の日本電子材料と横に並べる。

日本電子材料フォームファクター
上場市場東証スタンダードナスダック
直近の通期売上高293.66億円7.85億ドル(約1,248億円)
時価総額1,118.8億円106.4億ドル(約1.69兆円)
PSR(直近通期売上ベース)約3.8倍約13.6倍
PER16.7倍(会社予想)約40倍(直近ペース)
PBR2.49倍10.22倍
成長の柱メモリー向けメモリー、ロジック、CPO
将来の見せ方1年先の保守的な計画2030年までの長期目標

※円換算は1ドル159円の前提。

売上は約4倍、時価総額は約15倍。売上1円あたりにつけられている値段(PSR)は、フォームファクターの方が3.6倍高い。

この差には、いくつか理由が考えられる。

1. 成長の柱の数 メモリー一本足の日本電子材料と、メモリー・ロジック・CPOの3本柱を持つフォームファクター。HBMの需要が一服したときの耐性が違う。

2. 顧客の幅 フォームファクターは世界最大のファウンドリを大口顧客に持ち、ハイパースケーラーのカスタムASICにも入り始めている。AIの成長を、より広い入口で受け止められる。

3. 長期目標の有無 2030年の数字があるフォームファクターは、市場が軌道に値段をつけられる。日本電子材料は目先の計画でしか評価されにくい。

4. 市場そのものの違い ナスダック上場の米国企業と、東証スタンダード上場の日本の中小型株では、集まる投資家の層も売買の厚みも違う。同じ業績でも、つく値段が違うことは珍しくない。

どれも合理的な理由だ。ただ、それで3.6倍の差がすべて正当化されるかどうかは、別の問題になる。

リスクも並べておく

1. 3QはHBMからDDRへ構成が変わる 会社は3QのDRAM向け売上を2Qの過去最高と同程度と見込んでいる。ただし、メモリーメーカーがDDRの価格上昇に合わせて生産を振り向けるため、HBM向けからDDR向けへ大きく構成が移るとしている。HBM向けの方が付加価値が高いので、利益率には逆風になる。

2. 3Qの粗利率には一時的な押し上げが含まれる 3Qの非GAAP粗利率見通しは54%だが、これには700万〜900万ドルの関税還付による押し上げが含まれている。会社自身が繰り返さない利益だと説明している。4Q以降、この分がなくなることは頭に入れておく必要がある。

3. 評価がすでに高い PBR10.22倍、直近ペースでPER約40倍。2030年目標でもPER約27倍。成長が少しでも鈍れば、評価の見直しが大きく出やすい水準にある。

4. 為替 日本の投資家としては、ドル建ての資産だという点も忘れられない。株価が変わらなくても、円高に振れれば円換算の評価額は目減りする。

保有している立場から

昨日と今日で、同じプローブカードを作る日米の2社を見た。

日本電子材料は、市場が実績をまだ信じていない会社だった。フォームファクターは、市場がすでに4年先の目標まで信じている会社だ。同じ製品、同じ追い風で、市場の信じ方が正反対になっている。

この2社を両方持っていることには意味があると考えている。一方は期待が低すぎる可能性があり、もう一方は期待が高すぎる可能性がある。どちらの見方が正しいかは、これからの決算が決める。

フォームファクターを継続保有する理由は、成長の入口が複数あることだ。HBMの需要が落ち着いても、データセンター向けCPU、カスタムASIC、光電融合という別の柱が育っている。1本の柱に頼る会社より、崩れにくい。

一方で、売却を考える条件も明確にしておく。10月下旬に出る3Q決算で、関税還付を除いた実力ベースの粗利率が2Qの水準を下回ったときだ。HBMからDDRへの構成変化がどれだけ利益率を削るのかが、そこで見えてくる。今の株価は、高い利益率が続くことを前提にしている。その前提が崩れれば、PBR10倍という評価を支える根拠がなくなる。

明日はアドバンテストを扱う。プローブカードの2社が「つなぐ部品」だったのに対し、アドバンテストはテスター本体の世界首位だ。そして自分にとっては、保有していたが売却し、その後大きく上昇した銘柄でもある。

本ブログは個人の投資記録・考察であり、投資助言ではありません。掲載情報の正確性は最善の注意を払っていますが保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。