フォームファクター——売上は日本電子材料の4倍、時価総額は15倍
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先週の土曜の自分株まとめで、上昇1位だった銘柄だ。昨日の日本電子材料と同じく、半導体の検査に使うプローブカードを作っている。
同じ製品を作る2社を並べると、一つの事実が目に入る。フォームファクターの売上は日本電子材料の約4倍、時価総額は約15倍。 同じ商売をしているのに、市場がつけている値段の水準がまったく違う。
今日はこの差が何から来ているのかを見ていく。
どんな会社か
フォームファクターは米カリフォルニア州リバモアに本社を置く、プローブカードの世界大手だ。ナスダックに上場している。
事業は2つに分かれる。
| セグメント | 内容 |
|---|---|
| プローブカード | ウエハ上のチップを検査するための接点部品。売上の大半を占める |
| システム | 研究開発や技術開発向けの測定装置(プローバなど) |
プローブカードの中でも、用途は大きく2つに分かれる。
- DRAM向け:HBMとDDR(通常のDRAM)の検査用
- ファウンドリ・ロジック向け:データセンター向けCPU、ネットワーク用チップ、カスタムASICなどの検査用
ここが昨日の日本電子材料との最初の違いになる。日本電子材料の成長はほぼメモリー向けから来ていて、非メモリー向けは軟調だった。フォームファクターは、メモリーとロジックの両方で伸びている。
直近の四半期では、世界最大のファウンドリが売上の10%を超える顧客になっている。台湾向けの売上は前四半期比で30%以上伸びた。
業績:4四半期で売上3割増、利益は3倍
直近の四半期決算を並べる。
| 四半期 | 売上高 | 前年同期比 | 非GAAP1株利益 |
|---|---|---|---|
| 2025年4Q | 2.152億ドル | +13.6% | — |
| 2026年1Q | 2.261億ドル | +32.0% | 0.56ドル |
| 2026年2Q | 2.582億ドル | +31.9% | 0.82ドル |
| 2026年3Q(会社見通し) | 2.70億ドル(±0.10億ドル) | — | 0.86ドル(±0.09ドル) |
2025年通期の売上高は7.85億ドルで過去最高だった。そこから2四半期連続で過去最高を更新している。
2Qの非GAAP1株利益0.82ドルは、アナリスト予想の0.61ドルを大きく上回り、前年同期の3倍を超えた。粗利率(GAAP)は前年同期の37.3%から**50.7%**へ、13ポイント以上改善している。
CEOのマイク・スレッサー氏は、過去4四半期で売上を30%以上伸ばし、非GAAP粗利率を15ポイント改善し、1株利益を3倍にしたと述べている。
需要の入口が多い
フォームファクターの強さは、成長の入口が複数あることだ。
1. HBM4 2QのDRAM向け売上は8,500万ドルで、前年同期比48.9%増えた。そのうち約3分の2がHBM向けだ。2社の顧客がHBM4の高速検査向けに、同社の「SmartMatrix」というウエハ全面を一度に接触させる技術を採用している。
2. データセンター向けCPUとカスタムASIC ファウンドリ・ロジック向けでは、データセンター向けCPUの検査用カードが成長を牽引した。ネットワーク用チップも堅調で、ハイパースケーラー(大手クラウド企業)が独自に設計するカスタムASIC向けも立ち上がり始めている。
3. 光電融合(CPO) チップと光通信部品を一つのパッケージにまとめるCo-Packaged Optics向けの検査装置も伸びている。会社は3Q末までにCPO向けの累計売上が2,000万ドルを超えると見込んでいる。Week02で扱った光通信のテーマが、検査の側でもつながってきた。
日本電子材料はメモリー向けという一本の太い柱で伸びている。フォームファクターは複数の柱を持っている。1本の柱が細っても、ほかの柱で支えられるという構造の違いが、評価の差の一つの理由になっている。
2030年目標を数字で示している
もう一つの違いは、将来の見せ方だ。
フォームファクターは、2030年に売上高16億ドル、非GAAP粗利率55%、非GAAP1株利益5ドルという長期目標を掲げている。2025年の売上7.85億ドルから見れば、5年で約2倍にする計画だ。
昨日見た通り、日本電子材料は1年先の計画すら保守的に出し、実績で上振れさせてきた会社だった。長期目標を数字で示していない。
投資家から見ると、この差は大きい。長期の数字が示されていれば、市場はその軌道に沿って値段をつけられる。 示されていなければ、市場は目先の計画を基準にするしかない。
指標を確認する
2026年9月29日時点の数字。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 株価 | 約136.25ドル |
| 時価総額 | 約106.4億ドル |
| PER(2025年通期の実績) | 194.64倍 |
| PBR(2025年12月末の実績) | 10.22倍 |
| 1株利益(2025年通期、GAAP) | 0.70ドル |
| 1株純資産(2025年12月末) | 13.33ドル |
| 52週高値 | 160.27ドル(2026年6月30日) |
| 52週安値 | 35.67ドル(2025年9月30日) |
PER194.64倍という数字は、そのまま受け取ると判断を誤る。これは2025年通期のGAAPベースの1株利益0.70ドルで計算したもので、その後の急激な利益改善を反映していない。
直近のペースで計算し直すとこうなる。
| 前提 | 年間1株利益 | PER |
|---|---|---|
| 2025年通期実績(GAAP) | 0.70ドル | 約195倍 |
| 2Q実績と3Q見通しの平均を年率換算(非GAAP) | 約3.36ドル | 約40倍 |
| 2030年の会社目標(非GAAP) | 5.00ドル | 約27倍 |
※非GAAP利益は株式報酬費用などを除いた会社独自の基準で、GAAP利益より高く出る。
直近のペースで見ればPERは約40倍。そして会社が4年後に達成を目指す目標の利益で計算しても、今の株価はPER約27倍になる。
言い換えると、市場はすでに2030年目標の相当部分を今の株価に織り込んでいる。目標を達成しても、それだけでは株価が大きく上がる理由にはならない。目標を上回るか、目標への到達が早まる必要がある。
株価の動きもそれを示している。52週安値の35.67ドルから、現在の約136ドルまで1年で約3.8倍になった。6月末につけた52週高値の160.27ドルからは約15%下にいる。
日本電子材料と並べる
ここで昨日の日本電子材料と横に並べる。
| 日本電子材料 | フォームファクター | |
|---|---|---|
| 上場市場 | 東証スタンダード | ナスダック |
| 直近の通期売上高 | 293.66億円 | 7.85億ドル(約1,248億円) |
| 時価総額 | 1,118.8億円 | 106.4億ドル(約1.69兆円) |
| PSR(直近通期売上ベース) | 約3.8倍 | 約13.6倍 |
| PER | 16.7倍(会社予想) | 約40倍(直近ペース) |
| PBR | 2.49倍 | 10.22倍 |
| 成長の柱 | メモリー向け | メモリー、ロジック、CPO |
| 将来の見せ方 | 1年先の保守的な計画 | 2030年までの長期目標 |
※円換算は1ドル159円の前提。
売上は約4倍、時価総額は約15倍。売上1円あたりにつけられている値段(PSR)は、フォームファクターの方が3.6倍高い。
この差には、いくつか理由が考えられる。
1. 成長の柱の数 メモリー一本足の日本電子材料と、メモリー・ロジック・CPOの3本柱を持つフォームファクター。HBMの需要が一服したときの耐性が違う。
2. 顧客の幅 フォームファクターは世界最大のファウンドリを大口顧客に持ち、ハイパースケーラーのカスタムASICにも入り始めている。AIの成長を、より広い入口で受け止められる。
3. 長期目標の有無 2030年の数字があるフォームファクターは、市場が軌道に値段をつけられる。日本電子材料は目先の計画でしか評価されにくい。
4. 市場そのものの違い ナスダック上場の米国企業と、東証スタンダード上場の日本の中小型株では、集まる投資家の層も売買の厚みも違う。同じ業績でも、つく値段が違うことは珍しくない。
どれも合理的な理由だ。ただ、それで3.6倍の差がすべて正当化されるかどうかは、別の問題になる。
リスクも並べておく
1. 3QはHBMからDDRへ構成が変わる 会社は3QのDRAM向け売上を2Qの過去最高と同程度と見込んでいる。ただし、メモリーメーカーがDDRの価格上昇に合わせて生産を振り向けるため、HBM向けからDDR向けへ大きく構成が移るとしている。HBM向けの方が付加価値が高いので、利益率には逆風になる。
2. 3Qの粗利率には一時的な押し上げが含まれる 3Qの非GAAP粗利率見通しは54%だが、これには700万〜900万ドルの関税還付による押し上げが含まれている。会社自身が繰り返さない利益だと説明している。4Q以降、この分がなくなることは頭に入れておく必要がある。
3. 評価がすでに高い PBR10.22倍、直近ペースでPER約40倍。2030年目標でもPER約27倍。成長が少しでも鈍れば、評価の見直しが大きく出やすい水準にある。
4. 為替 日本の投資家としては、ドル建ての資産だという点も忘れられない。株価が変わらなくても、円高に振れれば円換算の評価額は目減りする。
保有している立場から
昨日と今日で、同じプローブカードを作る日米の2社を見た。
日本電子材料は、市場が実績をまだ信じていない会社だった。フォームファクターは、市場がすでに4年先の目標まで信じている会社だ。同じ製品、同じ追い風で、市場の信じ方が正反対になっている。
この2社を両方持っていることには意味があると考えている。一方は期待が低すぎる可能性があり、もう一方は期待が高すぎる可能性がある。どちらの見方が正しいかは、これからの決算が決める。
フォームファクターを継続保有する理由は、成長の入口が複数あることだ。HBMの需要が落ち着いても、データセンター向けCPU、カスタムASIC、光電融合という別の柱が育っている。1本の柱に頼る会社より、崩れにくい。
一方で、売却を考える条件も明確にしておく。10月下旬に出る3Q決算で、関税還付を除いた実力ベースの粗利率が2Qの水準を下回ったときだ。HBMからDDRへの構成変化がどれだけ利益率を削るのかが、そこで見えてくる。今の株価は、高い利益率が続くことを前提にしている。その前提が崩れれば、PBR10倍という評価を支える根拠がなくなる。
明日はアドバンテストを扱う。プローブカードの2社が「つなぐ部品」だったのに対し、アドバンテストはテスター本体の世界首位だ。そして自分にとっては、保有していたが売却し、その後大きく上昇した銘柄でもある。
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