半導体検査9社比較——テスト工程は+30〜100%、欠陥検査は+15%とマイナス
月曜から木曜まで、日本電子材料、フォームファクター、アドバンテストの3社を見てきた。今日はそこにテラダイン、日本マイクロニクス、Technoprobe、東京精密、そして欠陥検査側のレーザーテックとKLAを加え、9社を横並びにする。
先に結論を3つ書いておく。
1つ目。月曜に立てた仮説は、数字ではっきり裏づけられた。 AIの恩恵はテスト工程に集中していて、欠陥検査にはまだ届いていない。
2つ目。プローブカードの4社は、同じ製品を作りながら「どのAIチップを検査しているか」でまったく分かれていた。
3つ目。水素、原子力と続いた3週間の中で、半導体検査は唯一、市場が実需にしっかり値段をつけているテーマだった。
そしてもう一つ、今週は自分の分析方法について訂正しておくことがある。それも後半で書く。
まず数字を並べる
日本株5社(2026年10月2日時点)。
| 銘柄 | コード | 工程 | 株価 | 時価総額 | 予想PER | PBR | ROE | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本電子材料 | 6855 | プローブカード | 8,290円 | 1,215.6億円 | 18.1倍 | 2.71倍 | 15.0% | 1.21% |
| 日本マイクロニクス | 6871 | プローブカード | 15,020円 | 6,011.8億円 | 25.3倍 | 8.81倍 | 20.9% | 1.19% |
| 東京精密 | 7729 | プローバ | 19,205円 | 8,120.8億円 | 25.3倍 | 4.10倍 | 13.5% | 1.58% |
| アドバンテスト | 6857 | テスター | 38,630円 | 28.3兆円 | 42.4倍 | 35.22倍 | 57.6% | 0.15% |
| レーザーテック | 6920 | 欠陥検査 | 46,130円 | 4.3兆円 | 45.9倍 | 16.75倍 | 33.9% | 0.76% |
※アドバンテストのPBRは、木曜の記事(約23.8倍、9月30日時点)と大きく異なる。株価上昇分だけでは説明できず、参照したデータソースで1株純資産の基準日が違うためと考えられる。今日の表は5社すべて同一ソースの数値で揃えている。
海外4社。
| 銘柄 | ティッカー | 工程 | 株価 | 時価総額 | 実績PER | 直近ペースのPER | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| フォームファクター | FORM | プローブカード | 約150ドル | 117.6億ドル | 103.5倍 | 約45倍 | なし |
| テラダイン | TER | テスター | 約430ドル | 682.4億ドル | 59.9倍 | 約48倍 | 0.12% |
| KLA | KLAC | 欠陥検査 | 約205ドル | 2,685.4億ドル | 56.2倍 | 約44倍 | 0.45% |
| Technoprobe | TPRO(ミラノ) | プローブカード | 約33ユーロ | 約212億ユーロ | — | 約61倍 | なし |
※米国3社の株価は時価総額と当日の値動きからの概算。「直近ペースのPER」は、直近四半期の非GAAP1株利益と会社見通しを年率換算した試算。Technoprobeはアナリスト予想の2026年1株利益0.54ユーロで計算。
規模を円に揃えて並べると、こうなる(1ドル159円、1ユーロ約186円で換算)。
| 順位 | 銘柄 | 時価総額(円換算) |
|---|---|---|
| 1 | KLA | 約42.7兆円 |
| 2 | アドバンテスト | 28.3兆円 |
| 3 | テラダイン | 約10.9兆円 |
| 4 | レーザーテック | 4.3兆円 |
| 5 | Technoprobe | 約3.9兆円 |
| 6 | フォームファクター | 約1.9兆円 |
| 7 | 東京精密 | 8,120.8億円 |
| 8 | 日本マイクロニクス | 6,011.8億円 |
| 9 | 日本電子材料 | 1,215.6億円 |
最大のKLAと最小の日本電子材料では、約350倍の開きがある。
月曜の仮説は、数字で裏づけられた
月曜の記事で、半導体の検査には「テスト工程」と「欠陥検査」の2種類があると書いた。そして、AIとの関係はテスト工程の方が直接的で、欠陥検査は間接的だという見立てを置いた。
各社の直近の売上成長率を並べる。
| 銘柄 | 工程 | 直近の売上成長率(前年比) |
|---|---|---|
| テラダイン | テスト(テスター) | +104%(2026年4〜6月期) |
| 日本電子材料 | テスト(プローブカード) | +77.3%(2026年4〜6月期) |
| 日本マイクロニクス | テスト(プローブカード) | +48.6%(2026年1〜6月期) |
| Technoprobe | テスト(プローブカード) | +42.4%(2026年1〜6月期) |
| アドバンテスト | テスト(テスター) | +39.3%(2026年4〜6月期) |
| フォームファクター | テスト(プローブカード) | +31.9%(2026年4〜6月期) |
| 東京精密 | テスト(プローバ)+加工 | +18.9%(2026年4〜6月期) |
| KLA | 欠陥検査 | +15%(2026年4〜6月期) |
| レーザーテック | 欠陥検査 | -8.3%(2026年6月期通期) |
テスト工程は軒並み+30〜100%、欠陥検査は+15%とマイナス。
テラダインは半導体テスト事業だけなら前年比+128%で、売上の約70%がAI関連だと説明している。一方でレーザーテックは2026年6月期に10期ぶりの減収減益となり、決算翌日の株価は13.55%下げた。
同じ「検査」でも、AIの恩恵がどこに落ちているかは明確に分かれている。AIチップは複雑になり、HBMは積む前に1枚ずつ確かめる必要がある。この負担は「できたものが動くか」を確かめるテスト工程にかかり、「作り方が正しいか」を見る欠陥検査には、微細化の進展を通じて間接的にしか届かない。
なお東京精密の伸びが他のテスト関連より緩やかなのは、プローバに加えて加工装置や計測機器も手掛けているためだ。それでも2027年3月期の経常利益予想を400億円から440億円へ引き上げている。
プローブカード4社は「何を検査しているか」で分かれる
今週いちばん面白かったのがここだ。
プローブカードの4社は、同じ製品を作っている。それなのに、検査しているチップの種類がまったく違った。
| 会社 | 主な検査対象 | 直近の動き |
|---|---|---|
| 日本マイクロニクス | HBM | 中間期の営業利益が前年比2倍超。配当を95円から178円へ |
| 日本電子材料 | メモリー全般 | 1Qで上期計画の約9割を稼ぐ。非メモリーは軟調 |
| フォームファクター | HBM+ロジック+光電融合 | DRAM向けの約3分の2がHBM。世界最大のファウンドリが大口顧客 |
| Technoprobe | GPU・ロジック | AI関連が売上の過半。HBM向けは上期で約1,000万ユーロのみ |
Technoprobeは2026年に売上10.5億〜11億ユーロを見込み、売上規模でフォームファクターを上回る見通しだ。上期のEBITDA利益率は44.4%、2Q単独では49%に達した。ところが、HBM向けの売上は上期でわずか約1,000万ユーロしかない。Technoprobeの成長はほぼGPUとロジック向けで、HBMの波にはまだ乗っていない。
逆に日本の2社は、成長のほとんどをメモリー、特にHBMから得ている。フォームファクターはその両方にまたがっている。
この違いは、短期のリスクの違いにもつながる。
- フォームファクター:3Qは、HBM向けからDDR向けへ構成が移ると会社が開示している。HBMの方が付加価値が高いので、利益率には逆風になる
- Technoprobe:上期に集中したGPUの量産が4Qに一時停止し、2027年に再開すると経営陣が説明している
- 日本マイクロニクス・日本電子材料:メモリーへの集中そのものがリスクになる。HBMの需要が一服すれば、そのまま数字に出る
同じ「プローブカード」という一語でくくると、この違いが見えなくなる。投資家として見るべきは、製品名ではなく、その製品がどのチップにぶら下がっているかだ。
レーザーテックは「2023年のアドバンテスト」に似ている
欠陥検査側のレーザーテックについて、一つだけ触れておきたい。
2026年6月期は売上高2,304.85億円(-8.3%)、営業利益1,052.59億円(-14.3%)と減収減益だった。ところが同じ期の受注高は2,375億円で、前期の1,052億円から2.2倍に急増している。会社は2027年6月期の受注を3,000億〜4,000億円と見込み、売上高2,900億円(+25.8%)、営業利益1,250億円(+18.8%)と過去最高益を予想している。
減益の裏で、次の需要が立ち上がっている。これは木曜に書いた2023年のアドバンテストとよく似た構図だ。あのとき自分は、減益という事実だけを見て、その裏で立ち上がり始めていたAI向けの需要を見なかった。
木曜の教訓をここに当てはめるなら、レーザーテックの減益は「谷」である可能性が高い。受注が2倍以上に回復しているからだ。
ただし、2023年のアドバンテストとは違う点もある。レーザーテックの予想PERはすでに45.9倍で、市場は受注の回復をかなり織り込んでいる。谷で売られて放置されているわけではない。
今週から、見方を一つ修正する
ここで、自分の分析方法について訂正しておく。
Week07の水素回から、各社の割安度を測るために「理論PBR」という考え方を使ってきた。ROEを株主資本コスト(8%)で割って理論上の適正PBRを出し、実際のPBRと比べる方法だ。
ただし、その際のROEは「PBR÷PER」で逆算していた。この場合、式を整理するとこうなる。
実際のPBR ÷ 理論PBR = PBR ÷ (PBR ÷ PER ÷ 0.08) = 予想PER × 0.08
つまり「実際÷理論」の数字は、予想PERを12.5で割っただけだった。PBRとROEは計算の途中で打ち消し合っていて、実質的にはPERしか見ていなかったことになる。
計算そのものは正しい。Week07の岩谷産業の0.86はPER10.7倍×0.08、三菱重工の2.75はPER34.3倍×0.08だ。ただ、PBRやROEという別の角度から確かめたように見せていたのは、正確ではなかった。
それでも、この数字には意味がある。12.5倍という水準は「成長しない会社の適正PER」(1÷資本コスト8%)にあたる。だから予想PER÷12.5は、市場がその会社に「無成長の何倍の成長」を織り込んでいるかを示している。Week07とWeek08の「実際に稼いでいる会社ほど安い」という結論も、PERの比較としてそのまま成り立つ。
今週からは、この数字を正直に「成長織り込み倍率」と呼ぶ。
成長織り込み倍率で並べる
予想PER(直近ペース)を12.5で割った数字を、9社分並べる。
| 銘柄 | 予想PER | 成長織り込み倍率 |
|---|---|---|
| 日本電子材料 | 18.1倍 | 1.45 |
| 日本マイクロニクス | 25.3倍 | 2.02 |
| 東京精密 | 25.3倍 | 2.02 |
| アドバンテスト | 42.4倍 | 3.39 |
| KLA | 約44倍 | 約3.5 |
| フォームファクター | 約45倍 | 約3.6 |
| レーザーテック | 45.9倍 | 3.67 |
| テラダイン | 約48倍 | 約3.8 |
| Technoprobe | 約61倍 | 約4.9 |
9社すべてが1倍を超えている。 市場はどの会社にも、無成長の会社の1.5〜5倍の値段をつけている。
そして日本の中小型3社(日本電子材料、日本マイクロニクス、東京精密)は1.5〜2倍に収まり、海外勢と日本の大型2社は3.4〜4.9倍に集中している。水曜に「売上は4倍、時価総額は15倍」と書いた日本電子材料とフォームファクターの差が、業界全体でも同じように出ている。
日本株5社については、循環しない比較もできる。データソースが公表している実績ROEで理論PBRを出し、実際のPBRと比べる方法だ。
| 銘柄 | 実績ROE | 理論PBR | 実際のPBR | 実際÷理論 |
|---|---|---|---|---|
| 日本電子材料 | 15.0% | 1.88倍 | 2.71倍 | 1.45 |
| 東京精密 | 13.5% | 1.69倍 | 4.10倍 | 2.43 |
| 日本マイクロニクス | 20.9% | 2.61倍 | 8.81倍 | 3.37 |
| レーザーテック | 33.9% | 4.24倍 | 16.75倍 | 3.95 |
| アドバンテスト | 57.6% | 7.20倍 | 35.22倍 | 4.89 |
こちらは過去の稼ぐ力に対する評価で、急成長中の会社ほど割高に見えやすい。それでも順番はほぼ同じで、日本電子材料が最も控えめに、アドバンテストが最も強気に評価されている。
3週間を並べる
月曜の記事で、最後の欄を「?」にしておいた表がある。今週の結果で埋められる。
| 水素(Week07) | 原子力(Week08) | 半導体検査(Week09) | |
|---|---|---|---|
| 目標・予測と実績の関係 | 政策目標に実需がまったく追いつかない | 目標と実績の差は約2.4倍 | 実績が市場予測を追い越している |
| 市場の評価 | 水素にほぼ値段がついていない | 稼いでいる電力会社もPER10倍前後 | 全社がPER18〜61倍。実需にしっかり値段がついている |
水素は、政策が先行して実需も株価もついてこなかった。原子力は、実需はあるのに株価は控えめだった。半導体検査は、実需が予測を追い越し、株価もそれを追いかけている。
3つのテーマの中で、市場の評価と実需の向きが最も揃っているのが半導体検査だった。裏を返せば、割安な入り口を探すのが最も難しいテーマでもある。
自分のポジションから見て
今週の9社のうち、日本電子材料とフォームファクターを保有している。アドバンテストは2023年に売却した。
日本電子材料は、9社の中で最も控えめに評価されている。 成長織り込み倍率は1.45で、実績ROEで見ても同じ1.45。火曜に書いた通り、会社の計画が保守的で、1Qで上期計画の約9割を稼いでいる。市場がこのペースを信じれば、評価が見直される余地は9社で最も大きい。11月上旬の中間決算が、その答えになる。
フォームファクターは、HBMとロジックの両方にまたがる唯一の会社だ。 成長織り込み倍率は約3.6で、海外勢の中では中位にいる。10月下旬の3Q決算で、HBMからDDRへの構成変化がどれだけ利益率を削るかを確認する。
アドバンテストは、木曜の記事を書いた翌日から2営業日で+12.8%上がり、売却価格の8.7倍になった。 年初来高値38,730円にほぼ並んでいる。木曜に書いた通り、今は買わない。次に業績が落ちたとき、その理由が景気循環なのかAI需要の減速なのかを見分ける。
ウォッチリストに加えるなら、日本マイクロニクスだ。HBM向けプローブカードの本命で、中間期の営業利益は前年の2倍を超え、配当はほぼ倍増した。成長織り込み倍率は2.02で、同じHBM向けのフォームファクターより控えめに評価されている。保有している日本電子材料と業態が重なるので、両方を持つ意味があるかは慎重に考えたい。
明日は今週の自分株まとめとして、ポートフォリオの損益と週間騰落を確認する。
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