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Week 09 — 半導体検査
2026.09.29  ·  火曜 / 日本電子材料(6855) 深掘り

日本電子材料——3カ月で上期計画の9割を稼いで、株価は5月より安い

保有中

この2週間の土曜の自分株まとめで、先週は上昇2位、今週はその同業のフォームファクターが1位に入った。月曜に書いた通り、2週続けて同じ工程の会社が上がったなら、そこには構造がある。

日本電子材料は、その構造の日本側の当事者だ。そして数字を並べると、この会社には一つ奇妙な点がある。今期の最初の3カ月で上期計画の約9割を稼いだのに、株価は5月の水準より安い。

今日はこのずれを掘る。

どんな会社か

日本電子材料は、半導体のウエハー検査に使うプローブカードの専業大手だ。本社は兵庫県尼崎市で、東証スタンダードに上場している。

月曜の記事で、プローブカードを「テスターとウエハ上のチップをつなぐ、無数の針が並んだ接点部品」と説明した。チップの設計ごとに専用に作る必要があり、針が擦り減れば交換が要る。設備というより消耗品に近い性格を持つ部品だ。

この会社のプローブカードは大きく3種類に分かれる。

種類特徴
MタイプMEMS技術で作る先端品。今の成長の主役
Vタイプ垂直型。高密度の検査に対応
Cタイプカンチレバー型。従来からの標準品

もう一つの事業として電子管部品(計測機器用のフィラメントやカソードなど)もあるが、売上の大半はプローブカードが占めている。

投資家として押さえるべきは、この会社の成長はメモリー向けに偏っているという点だ。前期の決算短信では、非メモリー向けプローブカードの需要は軟調だった一方で、メモリー向けは国内外の先端半導体向けの需要拡大で大きく伸びたと説明されている。月曜に書いたHBMの「積む前に1枚ずつ確かめる」需要が、そのままこの会社の売上になっている。

業績:計画を毎回上回ってきた

まず前期の着地を見る。

2025年11月時点の会社予想2026年3月期 実績
売上高265億円293.66億円(+23.2%)
営業利益48億円72.49億円(+58.1%)
純利益32億円54.51億円(+57.8%)
営業利益率—24.7%

創業以来の最高売上・最高益だ。そして注目したいのは左の列になる。2025年11月の中間決算時点で、会社は営業利益を48億円と見込んでいた。実績は72.49億円で、予想を5割上回って着地している。配当も期中に60円から80円へ引き上げられた。

この会社の計画は保守的で、実績がそれを上回ってきた。 この傾向を頭に置いたうえで、今期を見る。

今期:3カ月で上期計画の9割

2026年5月に出た今期(2027年3月期)の期初計画はこうだった。

上期予想通期予想
売上高160億円330億円(+12.4%)
営業利益34億円74.5億円(+2.8%)
純利益24億円55億円(+0.9%)

最高益を出した翌年に、ほぼ横ばいの計画を出している。慎重と言えば慎重だ。

そして第1四半期(4〜6月)の実績がこうなった。

項目1Q実績前年同期比上期予想に対する進捗通期予想に対する進捗
売上高96億円+77.3%60.0%29.1%
営業利益31億円+109.7%91.2%41.6%

上期6カ月で稼ぐはずの営業利益の9割を、最初の3カ月で稼いでいる。 営業利益率は約32%で、前期通期の24.7%からさらに上がった。会社はメモリー向けプローブカードの需要急拡大と円安効果を理由に挙げている。

足元の株価指標(予想PER16.7倍、配当利回り1.31%)から逆算すると、予想1株利益は約457円、予想配当は約100円になる。期初計画の配当80円から引き上げられている計算だ。

株価は5月より安い

ここで株価を見る。

5月13日、つまり前期決算の発表前日の終値は8,260円だった。そして今日9月29日の株価は7,630円。

時点株価この間に出た業績
2026年5月13日8,260円(前期決算発表前)
2026年9月29日7,630円前期最高益、1Qで営業利益2倍超

過去最高益を発表し、その次の四半期で営業利益を倍にして、株価は8%下がっている。

土曜の自分株まとめで2週連続上昇TOP3に入ったのは、この下がっていた株価が戻り始めたところだったとも言える。

どの利益を信じるかで、評価が変わる

では、この株は高いのか安いのか。今週も理論PBRで見てみる。

2026年9月29日時点の指標はこうなっている。

項目数値
株価7,630円
時価総額1,118.8億円
予想PER16.7倍
PBR2.49倍
ROE(実績)15.0%
配当利回り1.31%

問題は、どの利益で計算するかだ。2つのケースを並べる。

前提予想ROE理論PBR(÷資本コスト8%)実際÷理論
現在の会社予想(PER16.7倍から逆算)約14.9%約1.86倍約1.34
1Qの営業利益ペースが続いた場合約21%約2.7倍約0.93

※1Qペースのケースは、1Qの営業利益31億円を4倍した年124億円に、期初計画と同じ比率で税金等を差し引いた粗い試算。

会社予想を信じれば理論値の1.34倍で割高側、1Qのペースを信じれば0.93倍で割安側になる。

先週の関西電力でも「どちらのROEで見るか」で評価が0.61倍から0.79倍まで動いた。あちらは原発が止まるかどうかで利益が振れる会社だったが、日本電子材料は会社自身の計画が実績に追いついていないことで振れている。

市場が5月より安い値段をつけているということは、少なくとも今のところ、1Qのペースをそのまま信じてはいないということだ。メモリー向けの需要がどこまで続くか、円安の効果がどれくらい含まれているか、そして次の四半期で同じペースが出せるか。11月上旬の中間決算が、その答えになる。

財務と投資:守りは固い

リスクを考える前に、この会社の財務の厚さを確認しておく。

前期末の自己資本比率は76.7%、現金及び現金同等物は263.46億円あった。現在の時価総額1,118.8億円の約4分の1が現金という計算になる。借金に頼らずに設備投資を続けられる体力がある。

実際、投資は積極的だ。2024年11月に熊本第4工場が竣工し、前期から本格稼働に入った。さらに2026年2月には、先端品のMタイプの生産能力を増やすため、兵庫県尼崎市に新工場を建設することを決めた。竣工は2028年8月の予定になっている。

需要がある今のうちに、次の供給能力を準備している。1Qの急拡大も、会社によれば先行投資で生産量を増やしてきたことが奏功した結果だという。

リスクも並べておく

1. メモリーへの偏り 成長のほぼすべてがメモリー向けから来ている。非メモリー向けは軟調だ。メモリーは半導体の中でも特に価格と設備投資の振れが大きい分野で、HBMの需要が一服すれば、この会社の数字はそのまま影響を受ける。

2. 円安の効果 1Qの好業績には円安効果も含まれている。月曜に書いた通り、アドバンテストの1Qの平均レートは1ドル159円で、前年同期の146円から大きく円安が進んでいた。円高に戻れば、同じ数量を売っても利益は目減りする。

3. 会社計画の保守性は、裏を返せば見通しの不透明さ 計画を保守的に出すのは、先が読みにくいことの表れでもある。前期はたまたま上振れたが、それが今期も続く保証はない。

4. 流動性 東証スタンダード上場で時価総額は約1,100億円。今週扱う3社の中では最も小さく、大きな売買が入ると値動きが荒くなりやすい。

保有している立場から

今日確認したことを整理すると、この株の評価は**「会社の計画」と「足元の実績」のどちらを信じるか**に尽きる。

計画を信じれば、PBR2.49倍は理論値を3割以上上回る割高な水準にある。実績のペースを信じれば、理論値よりやや安い。そして市場は今のところ、その中間よりも計画寄りの値段をつけている。

継続保有と判断している理由は2つある。

一つ目は、計画が保守的であることが過去の実績で確認できていること。前期は11月時点の予想を営業利益で5割上回った。今期も1Qで上期計画の9割に届いている。

二つ目は、財務が厚く、待つ体力があること。 自己資本比率76.7%、時価総額の4分の1が現金。メモリーの需要が一時的に落ち込んでも、会社が傾くような財務ではない。

売却を考える条件も決めておく。11月上旬の中間決算で、2Qの営業利益が1Qから大きく落ち込んだときだ。1Qの31億円が一時的なもので、2Qで計画並みの水準に戻るようなら、市場が1Qのペースを信じなかったことが正しかったことになる。その場合、会社予想ベースのPBRで見た割高さが、そのまま残る。

逆に2Qも1Q並みのペースが続き、会社が通期予想を引き上げれば、今の株価は実績に追いついていないことになる。どちらに転ぶかを、決算で確かめる。

明日はフォームファクターを扱う。同じプローブカードを作る米国の世界大手で、今週の自分株まとめで上昇1位だった銘柄だ。規模も顧客も違う日米の2社を並べることで、プローブカードという商売の中身がよく見えるはずだ。

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