原子力関連10社比較——同じ四半期、原発が動いた九電は+46%、止まった関電は-61%
月曜から木曜まで、Jパワー、三菱重工業、関西電力の3社を見てきた。今日はそこに九州電力、東京電力HD、IHI、そして海外のConstellation Energy、Cameco、Oklo、NuScale Powerを加えて横並びにする。
先に結論を2つ書いておく。
1つ目。原子力が利益に効いていることを、これ以上なくはっきり示すデータが見つかった。 同じ2026年4〜6月期、同じ燃料高、同じ三菱重工製の炉を持つ九州電力と関西電力で、経常利益の方向が真逆になっていた。違いは原発が動いたかどうかだけだ。
2つ目。先週の水素とまったく同じ構図が、原子力でも出た。 原子力で実際に稼いでいる会社ほど理論値より安く、原子力を語っている会社ほど高い。
順番に見ていく。
まず数字を並べる
国内6社。
| 銘柄 | コード | 株価 | 時価総額 | 予想PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Jパワー | 9513 | 4,205円 | 7,697.3億円 | 9.1倍 | 0.53倍 | 2.50% |
| 関西電力 | 9503 | 2,765.5円 | 3.1兆円 | 9.9倍 | 0.89倍 | 2.89% |
| 九州電力 | 9508 | 2,061.5円 | 9,775.3億円 | 7.8倍 | 0.82倍 | 2.43% |
| 東京電力HD | 9501 | 522.1円 | 8,390.2億円 | — | 0.35倍 | 0.00% |
| 三菱重工業 | 7011 | 3,879円 | 13.1兆円 | 34.3倍 | 4.23倍 | 0.75% |
| IHI | 7013 | 2,797円 | 3.0兆円 | 17.3倍 | 4.56倍 | 0.82% |
※Jパワーと三菱重工業は2026年9月18日終値、ほかは9月24日終値ベース。九州電力のPBRは実績1株純資産2,522.95円、東京電力HDのPBRは決算短信の1株純資産1,491.01円から算出。
海外4社(2026年9月24日終値ベース)。
| 銘柄 | ティッカー | 株価 | 時価総額 | PER | 配当利回り | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Constellation Energy | CEG | 261.62ドル | 約935億ドル | 約26倍(実績) | 0.63% | 米国最大の原発事業者 |
| Cameco | CCJ | 88.12ドル | 約384億ドル | 約73倍(予想) | 0.19% | ウラン大手 |
| Oklo | OKLO | 38.29ドル | 約72億ドル | 赤字 | なし | SMRスタートアップ |
| NuScale Power | SMR | 8.47ドル | 約36億ドル | 赤字 | なし | NRC認証済みSMR |
同じ四半期、原発が動いた会社と止まった会社
まず今週いちばん大事なデータから。
木曜の記事で、関西電力の2026年4〜6月期は原子力利用率が78.8%から59.8%へ落ち、燃料高と重なって経常利益が60.8%減ったと書いた。そして「原発の価値は、燃料が高い年に一番よく分かる」とまとめた。
その裏づけが、隣の会社にあった。
| 2026年4〜6月期 | 九州電力 | 関西電力 |
|---|---|---|
| 経常利益 | 591億円 → 863億円 | 1,347億円 → 528億円 |
| 前年同期比 | +45.9% | -60.8% |
| 原子力の稼働 | 増加 | 利用率78.8% → 59.8% |
| 燃料費調整の期ずれ | 差益から差損へ | 差益から差損へ |
| 保有する原発 | PWR 4基(玄海3・4、川内1・2) | PWR 7基(美浜3、高浜1〜4、大飯3・4) |
| 原子炉メーカー | 三菱重工 | 三菱重工 |
同じ四半期だ。中東情勢による燃料高も、燃料費調整の期ずれが差損に転じたことも、両社に等しく降りかかっている。炉型も同じPWRで、作ったのも同じ三菱重工だ。
違うのは、原発が動いたかどうかだけだった。九州電力は決算短信で、期ずれの悪化と小売販売電力量の減少があったものの、原子力発電所の稼働増がそれを上回ったと説明している。関西電力は定期検査の長期化と美浜3号機の計画外停止で、原発の4割が止まっていた。
結果、経常利益は片方が+46%、もう片方が-61%。
木曜に「燃料高という高潮が来たとき、関電は防波堤の4割が点検中だった」と書いた。九電の防波堤は立っていた。原子力の価値を示すデータとして、これ以上わかりやすいものはないと思う。
理論PBRで並べ直す
今週使ってきた枠組みで、利益を出している国内5社を並べる。ROEはPBR÷PERで逆算した予想ベース、資本コストは8%とした。
| 銘柄 | PBR | 予想ROE | 理論PBR | 実際÷理論 |
|---|---|---|---|---|
| 九州電力 | 0.82倍 | 約10.4% | 約1.30倍 | 約0.63 |
| Jパワー | 0.53倍 | 約5.8% | 約0.73倍 | 約0.73 |
| 関西電力 | 0.89倍 | 約9.0% | 約1.12倍 | 約0.79 |
| IHI | 4.56倍 | 約26.4% | 約3.30倍 | 約1.38 |
| 三菱重工業 | 4.23倍 | 約12.3% | 約1.54倍 | 約2.75 |
東京電力HDは最終赤字で今期予想も未定のため、この計算には入れていない。
きれいに割れている。
上の3社は、原子力で実際に稼いでいる、あるいは稼ぐ仕組みを持つ電力会社だ。 九電と関電は原発を動かして利益を出し、Jパワーは大間で長期脱炭素電源オークションを落札している。この3社はすべて理論PBRを下回っている。
下の2社は、原子力の機器を作るメーカーだ。 三菱重工は再稼働15基のうち12基を作り、IHIも原子力機器を手掛け、2026年3月期には原子力事業の受注見通しを250億円上方修正している。そしてこの2社は理論PBRを上回っている。
ただし水曜に確認した通り、三菱重工の原子力は全社売上の約6%にすぎず、株価を動かしているのは防衛とガスタービンだった。IHIも同じ構図で、株価を押し上げているのは民間航空エンジンと防衛になる。
先週の水素と、同じ構図が出た
先週の金曜、水素関連8社を並べて「やっている会社ほど安く、語っている会社ほど高い」と書いた。岩谷産業や三菱化工機は理論PBR以下で、三菱重工や川崎重工は理論値を大きく上回っていた。
今週、原子力でもまったく同じ形が出た。
| 水素(Week07) | 原子力(Week08) | |
|---|---|---|
| 理論値以下 | 岩谷産業、Jパワー、三菱化工機 | 九州電力、Jパワー、関西電力 |
| 理論値以上 | 三菱重工業、川崎重工業 | 三菱重工業、IHI |
| 理論値以上の理由 | 防衛 | 防衛・航空エンジン・ガスタービン |
三菱重工とJパワーが両方の表に入っているのは偶然ではない。重工株はテーマが変わっても防衛で評価され、Jパワーはテーマが変わっても割安のまま置かれている。
ただ、2週の間には決定的な違いが一つある。
水素の場合、理論値以下の会社が安いのは「水素がまだ利益を生んでいないから」だった。原子力は違う。九電と関電は、原子力がすでに利益を生んでいるのに理論値以下にいる。
これには電力株特有の理由もある。電気料金は規制の影響を受け、自己資本比率は低く(九電は19.9%)、今回見たように原発の稼働や燃料市況でROEが大きく振れる。市場は、振れやすいROEに対して慎重な評価をつけている。そう考えれば、この割安には一定の理屈がある。
それでも、九電の理論値の0.63倍という数字は、今週見た中で最も大きな乖離だ。原発を動かして燃料高の四半期に増益を出した会社が、ここにいる。
東京電力HD:原子力が最大の資産であり、最大の負債でもある
国内でもう1社、特殊な会社がある。
東京電力HDは2026年1月に柏崎刈羽6号機を起動し、4月16日に営業運転を開始した。福島第一原発事故以降、東電の原発が動くのは初めてだ。国内で最も大きな電力需要地を抱え、しかも柏崎刈羽は7基を持つ世界最大級の原発サイトになる。原子力の稼働余地という意味では、今週の中で最大のポテンシャルを持っている。
一方で、2026年3月期は4,542億円の最終赤字だった。福島第一原発で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し準備に9,138億円、原子力損害賠償費に827億円の特別損失を計上している。営業利益は3,376億円(+44.0%)、経常利益は4,173億円(+64.0%)と本業は伸びているのに、廃炉関連の費用がそれを飲み込んだ。
今期の業績予想は「中東情勢で燃料価格の見通しが不透明」として売上から純利益まですべて未定、配当はゼロだ。PBRは0.35倍。
東電にとって原子力は、動かせば利益を生む資産であり、片付けるために巨額の費用がかかる負債でもある。 柏崎刈羽の再稼働が進めば前者が、福島第一の廃炉が進めば後者が大きくなる。どちらがどれだけ大きくなるかは、外からは読めない。理論PBRの計算ができないのは、単に赤字だからではなく、この会社の評価そのものが定まらないからだと考えている。
海外:米国の原子力株は、今年大きく調整している
海外の4社に移る。
**Constellation Energy(CEG)**は米国最大の原発事業者で、月曜に書いたMicrosoftとのスリーマイル島1号機再稼働契約の当事者だ。国内の九電や関電と同じ「原発を動かして稼ぐ」タイプにあたる。
注目すべきは株価の動きだ。52週高値は412.70ドルで、現在の261.62ドルはそこから約37%下にある。年初来でも約25%下落した。AIデータセンターと原子力の組み合わせで大きく買われた後、2026年に入って大きく調整している。PERは約26倍で、国内の電力会社(7.8〜9.9倍)の3倍前後の水準だ。
Cameco(CCJ)は世界有数のウラン生産会社で、原子炉メーカーのWestinghouseにも出資している。月曜の分類には入れていなかったが、原子炉を動かすための燃料という、もう一つの上流側の銘柄になる。
こちらも52週高値の135.24ドルから、現在の88.12ドルは約35%下にある。予想PERは約73倍。ウラン価格と原子力需要の拡大への期待が、利益に対してかなり先まで織り込まれている。
**Oklo(OKLO)とNuScale Power(SMR)**は、月曜に「タイプ3:SMRスタートアップ」として分類した会社だ。どちらも赤字で、売上はほとんど立っていない。OkloはMetaとの契約、NuScaleは米原子力規制委員会(NRC)の設計認証を得た唯一のSMRという、それぞれのストーリーで評価されている。
時価総額はOkloが約72億ドル、NuScaleが約36億ドル。先週の水素回で見たPlug Powerの約29億ドルと、ほぼ同じ規模感だ。PERもPSRも意味を持たない段階で、ストーリーだけで数千億円から1兆円規模の値段がついている。
5つのタイプに分類する
今週の10社を、原子力との関わり方で分けるとこうなる。
| タイプ | 該当 | 原子力と株価の関係 |
|---|---|---|
| 原発を動かして稼ぐ | 九州電力、関西電力、Constellation Energy | 稼働がそのまま利益に出る。国内2社は理論値以下 |
| 原発をこれから動かす | Jパワー | 大間は収入の枠組みを確保済み。時期が未定 |
| 原発が資産でも負債でもある | 東京電力HD | 柏崎刈羽の再稼働と福島第一の廃炉が同居 |
| 原発を作る | 三菱重工業、IHI | 原子力は伸びているが、株価は防衛・航空で動く |
| ストーリーで評価される | Oklo、NuScale Power | 赤字。SMRの将来価値だけで値段がつく |
Camecoは燃料供給の立場で、このどれにも収まらない。
この比較から何を持ち帰るか
原子力テーマで株を選ぶなら、見るべき指標ははっきりした。原子力利用率だ。
九電と関電の比較が示した通り、原発を動かして稼ぐ電力会社にとって、稼働率はそのまま利益になる。燃料が高い年ほどその差は開く。そして国内の2社は、それだけ利益に直結しているにもかかわらず、理論値より安い評価にとどまっている。
一方で、原子力の「ストーリー」で買われている株は、原子力で動いていない。重工2社は防衛と航空で、SMRスタートアップは将来への期待で動いている。原子力の業績を見て買っても、株価の理由とずれることになる。
自分の保有株で言えば、Jパワーは「これから動かす」タイプにいて、大間の工程が示される来春の中計が次の判断材料になる。関西電力は定期検査明けの稼働率回復を待つ。そして今週の発見として、九州電力は理論値の0.63倍で、しかも原発を動かして燃料高の四半期に増益を出している。これはウォッチリストに加える価値がある。
明日は今週の自分株まとめとして、ポートフォリオの損益と週間騰落を確認する。
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